原尞「そして夜は甦る」

原尞が直木賞を取って「私が殺した少女」 を読んだのは確かだが、その後処女作の 「そして夜は甦る」を読んだかどうか記憶 がないので読んでみた。 うーん、まったく記憶がない、しかも話が 複雑で途中からよくわからなくなったが、 止めるのも癪なので読み…

原尞「それまでの明日」

知らなかったが13年も新作が出ていなか ったようだ。日本製の本格ハードボイルド の登場と話題になって直木賞もとって、そ れから20年以上もたって、さて読んだ、新 作。ぐいぐい読める、でも大きな事件は起 きない、もっと刺激的なミステリーがいっ ぱいあ…

平松洋子「父のビスコ」

昨年の暮れに平松洋子を2冊読んだところ、 先日新聞で読売文学賞に平松洋子の父のビ スコという記事を読んだので早速読んでみ た。故郷倉敷と父のことを綴る、最初に「 父のどんぐり」最後に「父のビスコ」とい うエッセイを置いている。 亡くなった父母をし…

三浦しをん「神去なあなあ日常」「神去なあなあ夜話」

三浦しをんお得意のお仕事小説のこれは林 業小説。無気力な若者が林業の現場に放り 込まれ徐々に林業の面白さ大切さを感じ取 り、田舎に残る土俗的ななにものかに触れ ていく心の揺れをとてもうまく描いている。 どんどん読めてしまって、一見お気楽小説 に…

池上俊一「ヨーロッパ史入門ー原形から近代の胎動ー」

世界史はむつかしい。 ヨーロッパ史に限っても、まずギリシャに してもまるまるヨーロッパではないし、東 ローマ帝国はビザンツ帝国となってイスラ ムの影響下にあるし、バルカン半島は混沌 としている。さらにスペインもイスラム下 に置かれ、ヨーロッパは…

外岡秀俊/中原清一郎「人の昏れ方」

外岡秀俊/中原清一郎の2冊目、4つの連作 短編集。「悲歌」父の戦争と引き揚げ、「 生命の一閃」仕事と家庭の不和、「消えた ダークマン」コソボ紛争取材の話、「邂逅」 死と向き合う話とそれぞれ重く考えさせら れる話ばかり、じっくり読んだ。 もう新作を読…

外岡秀俊/中原清一郎「カノン」

外岡秀俊が亡くなったという記事を読んだ。 彼が「北帰行」で1976年文藝賞をとり単行 本を買って読んだのはすぐだったか、働き だしてからだったか。就職して小金を得た ので同世代の新人作家の単行本をいろいろ 買っていたことがある、村上龍も村上春樹 も…

伊集院静「ミチクサ先生」(上)(下)

伊集院静は初めて読んだ、漱石の伝記物語 というので読んでみた。わたしの好みの文 章とは少し違う、説明描写が多くて内省的 なところがない。漱石はあくまで紳士で、 鏡子夫人も素直な女性、わかりやすい人物 設定だがほんとうにそうだったのか。 漱石が新…

村上春樹「アンダーグラウンド」

コロナ禍で今年は大作をいくつか読もうと 思っていた。漱石読破は手付かず、カラマ ーゾフは読了、予定外の三体を読了、そし て村上春樹の未読であった地下鉄サリンの 2作品は片方だけようやく読んだ、ずいぶ ん時間がかかった。 テレビを見てないので全貌…

平松洋子「サンドイッチは銀座で」「ステーキを下町で」

平松洋子はすこし気になっていたがようや く読んでみた。なかなかしたたかなエッセ イストだ、ただお店に行っておいしかった とか旅に出てこんなもの食べたとかのエッ セイではない、なんという楽しい文章。 いやいい文章というのは違う、芸のある文 章とい…

「カラマーゾフの兄弟」あんちょこ(完成版)

添付するのを忘れていた。 2か月余りかかって読んだカラマーゾフの 兄弟に伴走していたのは手作りの相関図、 これなくしては読み進められなかった、 これを作りながらで、グルーシェンカは太 ってしまってなんて文章が出てくるとそう かとすこし膨らませたり…

「カラマーゾフの兄弟」第五巻読了

光文社古典新訳文庫の「カラマーゾフの兄 弟」を、第一巻は購入し、あとは図書館で 一冊づつ借りて読んできた。 第五巻を図書館で借り出してみたら、本編 は四巻で終わっており、残りはエピローグ だけだった。 判決が出たところで本編は終わり、上告も ない…

「カラマーゾフの兄弟」第四巻読了

ようやく4巻を読み終えた。裁判がはじま り、検事のイッポリートと弁護士のフェチ ュコーヴィチがわたりあう。こちらも饒舌 すぎる、とにかくだれもが饒舌、ロシア人 はこんなんなんだろうか。 ようやく見せ場になってきたようだ、そし て4巻の最後に判決、…

白石一文「一億円のさようなら」

なんとも変わった話だった。 本ストーリーもサイドストーリーも地に足 がついていないような話で、わたしの好み ではありませんでした。 テレビドラマ化されたみたい。 一億円のさようなら (徳間文庫) 作者:白石一文 徳間書店 Amazon

「カラマーゾフの兄弟」第三巻読了

これにすこし時間がかかった。ちょっと飽 きてきたこと、ミーチャがあてもなくばた ばた奔走すること。 でもようやく父親殺しの場面へ、そしてミ ーチャへの尋問、これがまたミーチャがし ゃべりすぎていいかげんにしろよと思った こと。時間がかかった。さ…

死ぬまで生きる

まあ、あたりまえのことである。 MOOK「知の巨人立花隆のすべて」という 本を読んだ。そこで立花は、 人間は皆死ぬ力を持っている、死ぬまで生 きる力といったほうが良いかもしれない。 死ぬまでちゃんと生きることこそがんを克 服するということ・・・ なる…

白石一文「光のない海」

どうしようもないミーチャがえんえんと悪 態をついているものだから、なかなか読み 続けられず、つい他の本に手を出す。 ひさしぶりに白石一文、わりと新しい小説 みたい。以前とちょっと違うみたい、なん だか宮本輝みたい、何人もの男女の数十年 を書き切…

「カラマーゾフの兄弟」第二巻読了

第二巻読了。ひとつ目の壁である大審問官 のところ、ふたつ目の壁であるゾシマ越え、 ともに走ってとにかく読み流す。両者とも 深く理解したわけではないがなんとなく云 っていることはわかる、もういちど戻って 読み返すかもしれない。 とにかく二巻終わっ…

「カラマーゾフの兄弟」第一巻読了

この夏の宿題は「カラマーゾフの兄弟」を 読むことだった。ところが「三体」が割っ て入ってきて結構時間がかかってしまい、 夏の終りに読み始めることになってしまっ た。大学生なら9月末まで夏休みだからま あいいか。村上春樹がつよく推しているの でいつ…

劉慈欣「三体Ⅲ 死神永生」(上下)

「三体」全5冊の4,5巻を読了。 これはさらにSF、リアリティはほぼなし、 SFファンじゃないとちょっとつらい、や っぱり飛ばし読みしてしまった。 宇宙人類史SFにいろんなバリエーション を加えて読ませるのはうまいと思う。で もなあ地球から離れ、仲間た…

「山田稔自選集 1」

名古屋の郊外のブックオフで、京都の編集 工房ノアの山田稔の本を見つけたときはた いそう驚いた。惜しまれて閉店した京都の 「三月書房」のブログをときどき読んでき たが、(東京偏重じゃない)京大か京都の 学者、作家の、天野忠や山田稔などの作品 が紹…

劉慈欣「三体Ⅱ 黒暗森林」(上下)

つづけて2巻、3巻である。 しっかりSFになってきた。ものすごい宇宙 への進出、宇宙艦隊とその戦力は膨大、地 球の経済力はそれを確保できるだけの膨大 さになっているのだろうか、誰がそれを生 みだしているのか。というような素朴な疑 問は置いておいて、…

佐々木譲「愚か者の盟約」

ねっころがっての読書。佐々木譲の政治サ スペンスというか、政界の実在人物たちに 主人公を入れ込んで、政争の中である種の 信念を持ちながらのしあがっていく物語。 6、70年代からの旧社会党の教条主義とい うかダメさ加減の中でいかに力を獲得し、 最後は…

村上春樹「古くて素敵なクラシック・レコードたち」

自分の趣味がどれも本になり、マニアックで村上春樹らしいなあと感心されるのはすごいことだ。こんどはクラシックレコードのコレクション、しかもLPレコード。 昔、持っていたクラシックLPレコードはた かだか50枚くらいだったがすべて売り払っ た。高校時代…

宮下規久朗「聖母の美術全史」

ちくま新書の2冊分くらいある大作「聖母 の美術全史」。副題にー信仰を育んだイメ ージーとあるように、聖母マリアのキリス ト教における位置付けから、信仰対象とし ての聖母から美術としての聖母まですべて を網羅したような記述で最後まで興味深く 読んだ…

劉慈欣「三体」(1)

友人のお薦めで読んでみる、5巻の内とり あえず第1巻。 オバマがインタビューで愛読したと明かし より有名になったといわれる。SFは苦手な 分野だし、物理学絡みのところはよくわか ないが、大きな世界観、宇宙観に惹きこま れた。第2巻を図書館に予約した。…

三浦しをん「まほろ駅前狂騒曲」

まほろ駅前3部作の3冊目、これで完結。 いままでの登場人物が再登場、多田の進展 と行天の過去を乗り越えていくのが不思議 と感動を呼びおこす。どたばたであるのに 静かな読後の喜びがある。うまいとしかい えない、よかった。 映画も見てみたいな。 まほろ…

上野千鶴子「在宅ひとり死のススメ」

孤独死を在宅ひとり死と呼び、忌み嫌うこ とはないと云う。そのとおり。 学者らしくデータにより説明していく、な にが本人にとって幸せか、それを自分で決 める。そのとおり。 すべて納得するわけではないが、こういう ことを云えるようになったのはよいこ…

平野啓一郎「本心」

平野啓一郎の新作長編、ゆっくり丁寧に読 んだ。近未来のAIによってヴァーチャル・ フィギュアとして亡くなった人を再現でき る世界で、主人公が母を再現し悲しみを癒 しさらに母の秘密を探す。 AIによる人の再現は、カズオ・イシグロの 「クララとお日さま…

佐藤賢一「最終飛行」

サン・テグジュペリとは名前からして孤高 の作家のイメージがある。「星の王子様」 以外の作品を読んだことがないが、出撃後 消息不明になった飛行士として知っている けれど人物はまったく知らなかった。ナチ スによるパリ陥落から反撃までの彼の行動 と人…