平野啓一郎の新作長編、ゆっくり丁寧に読
んだ。近未来のAIによってヴァーチャル・
フィギュアとして亡くなった人を再現でき
る世界で、主人公が母を再現し悲しみを癒
しさらに母の秘密を探す。
AIによる人の再現は、カズオ・イシグロの
「クララとお日さま」と似ているが、ここ
では自由死という死の自己決断、貧困問題、
その他のテーマが重なり、深く考えさせる
物語となっている。読ませる、走らないよ
うに抑えながらもどんどん読んでいく。一
回では読み込めないと思えるほど深い、し
かもおもしろい。
しかしながら亡き母を再現し悲しみや孤独
を癒したいという基本的なところが共感で
きなかったのである。いささか醒めた視線
は変わらなかった。