黒川創「鶴見俊輔伝」

晦日、年が明ける前にこの本の感想を書

いておく。筋を通し己れを貫き、一方で柔

軟であることがあらためてわかる。

最後の方でこう書かれている。「対立する

議論においても、何割かの理は、相手の側

に含まれる。」と。今の国内の議論を求め

ない風潮を見るにつけ、このような謙虚さ、

熟慮がほしいと願う、この人は一途だけど

こういう懐の深さを感じる。

もうひとつ、戦争は殺人を国家が命令する

ということ、度胸を付けるための訓練で捕

虜を殺す現場で私はその命令を拒否できる

かという問いかけである。戦闘状態ではな

いのに、でも戦争というものにはこういう

ことも含まれるのだということ。わたしは

高校時代からそれが怖かった、これはわた

しが抱えてきた命題でもある。

鶴見俊輔の熱心な読者ではなかったが、ひ

ととなり、存在そのものになんらかの感化

を受けてきたことは間違いない。

鶴見俊輔伝

鶴見俊輔伝