小津安二郎「戸田家の兄妹」

ひさしぶりの小津。1941年作品。

戦後の小津作品を網羅しようと思ってい

たのに戦前の作品だった。小津が徴兵か

ら帰ってきて撮った映画、戦争体験はど

こにもでてこない。裕福な一族において

当主が亡くなり家族がばらけていく。嫁

姑というと普通姑が嫁いびりをするのだ

がここでは逆、あれあれと思っていたら

そうか家を構えている方がいばっている

のか。

これは佐分利信の映画だ。最初はからか

われている変わり者ふうなのに、最後に

強く兄妹を説教するしっかりした男にな

る。そしてラストでは結婚相手から恥ず

かしくて隠れる、あの佐分利信が照れて

いる。広い海岸へ大きな画面の拡がり、

すがすがしい気分、幸福感。

ちょっとやっかいな家族関係を描きなが

ら最後は気持ちよく映画館を出ていく、

そういうのは名作なんだろうな。

ところで高峰三枝子の若き頃をはじめて

見た、フルムーンCMの頃と同じ顔で、な

んか変な感じだった。