小津安二郎「彼岸花」

1958年作品。小津の初カラー作品だそう

だ。一応、戦後作品が15作あるのでそれ

は見ておこうと思う。これは7本目。

面白い、まだテレビがなかったのでこう

いうホームドラマを映画館で見たのだろ

う。それをよく作り込んだ小津で見られ

たのは幸せなことだ。わたしの両親は小

津を見てたのだろうか、そんな話は聞い

たことがない、黒澤明は聞いたことがあ

ったが、洋画を見に行ってただろうな。

小津の評価は演出方法や構成美は以前か

らあったと思うが、日常の機微、家族の

普遍性を丁寧に描いたことが再評価され

ているのだろうか、懐古趣味や日本賛美

ではなく世界での普遍性として。

評論、解説本を読んでみたくなった。

さて、

男三人組に笠智衆が加わってこれも面白

いが、やっぱり女優陣。

田中絹代、真正面から撮った表情がすば

らしい、夫に呆れ哀れみ私は私のやり方

でと意志を感じ、娘を心配し喜び楽しみ

信頼する、そういう複雑な感情を抑えた

演技の表情からにじみ出る。

山本富士子、こんなにいきいきした山本

富士子は見たことがなかったような気が

する。(市川崑「私は二歳」があったか)

wikiをみると五社協定の犠牲になり、自

分の意志強く啖呵を切り1963年から映画

に出ていないそうだ。凄い。だからちょ

っとぴんとこない女優だったのか、見直

した見惚れた。

有馬稲子、お手伝いの長岡輝子にはもう

少し演技の場があればよかった。

ラストシーンで田中絹代が廊下の突き当

りの籐椅子(ずっと空席だった)にはじ

めて座ってほっとする場面が見事だった。