梶村啓二「「東京物語」と小津安二郎」

平凡社新書で小津関連本を見つけたので

購入して読んだ。

東京物語」を読み解く、なぜ世界はベ

スト1に選んだか。日本人が日本的情緒、

あるいは郷愁をもって東京物語を観るよ

うには世界の人々は観ているわけじゃな

いので、ではなにに魅かれるのか、その

普遍性とはなにか。

尾道の老夫婦が東京に仕事と家庭を持つ

息子たちからお荷物扱いされる、息子た

ちは生活者として苦労していることがこ

の本でも強調される。でもどうだろう、

わたしはそのようには見なかった。山村

聰は医院を構える成功者だし、杉村春子

も東京に自分の美容院を持つ成功者じゃ

ないか、両親はがっかりしていたか、そ

りゃあ上流層ではないけどまあまあだな

と満足しているんじゃないか。わたしは

そう思った。

また息子娘の両親への愛情もごく普通の

表現だと見える、生活に追われるところ

へのんびり両親が来るのだから、まああ

んなものではないか。ことさら家族の崩

壊でもない。

云おうとすれば、戦後の復興のなかで、

徐々に古い家族制度がゆるやかになくな

っていく過程の断面を切り取ったという

ことだろう。

原節子の(優等生ゆえの、また戦争ゆえ

の)深い哀しみを除けば、全体に大きな

哀しみをわたしは持たなかった。受容し

ていける哀しみというものである。だか

尾道に帰って妻に先立たれた笠智衆

もやることがあるぞと受けとめたのである。

ktoshi.hatenablog.com