丸谷才一「持ち重りする薔薇の花」

持ち重りする薔薇の花
丸谷才一の評論とかは私にはむつかしいが、エッセイは面白く、小
説はさらに面白い。寡作にして、長編小説は10本にも満たない、
8年ぶりの新作という。いつものように、発売日いやその前日に書
店をのぞくと平台に。
他に読んでた本があったので、ようやく読みはじめたのだが、話の
中心にある弦楽四重奏を聞きたくて、モーツァルトを引っぱり出し
(なにせ1枚しか持っていない)、すこしきちんと聴いてみたいと
思わせるストーリー展開。
いや、元経団連会長の昔の思い出という普通の人にはまるで接点の
ない主人公の話なのだが、そこはうまい、凝っている、華やか、充
分に読者を楽しませてくれる。それがどうしたという話なのだがそ
れでもいいのだ、そんな気分にさせてくれる小説なんてめったにな
いのだから。