辻原登の新作である。
タイトルからおかしい、装丁の絵も純文
学とは思えない、奇想の物語である。
リアルドールを愛玩する男がリアルな女
性と付き合いだし、その嫉妬から人格を
持ちはじめ、最後は心中天網島よろしく
(なんといっても小春だからね)心中の
ような形で終わる。
という話にあらゆる蘊蓄を織り交ぜなが
ら畳みかけるように進めていく。といっ
て情報小説ではない、知らなくてもいい
やっぱり蘊蓄である。
辻原登は七変化の作家なのかこのような
作家はいない。丸谷才一がすこしこうい
うところがあるが、そうか、丸谷才一の
エッセイみたいな小説だ。そこへしっか
りしたストーリーがあり、荒唐無稽との
紙一重でもあるが、わたしは一気に読み
終えた。