小津安二郎「東京暮色」

1957年、最後の白黒作品だそうだ。

小津らしいちょっとしたユーモアがない

暗い映画なのだが、とくに違和感はない、

人生には希望も諦念もいつもあるわけで

はないのだから。普通の奥さん役を演じ

ている山田五十鈴をはじめて見た、黒澤

蜘蛛巣城や用心棒のイメージしかなか

ったので。むつかしい抑えた普通の役も

うまい、杉村春子がいつも自然でうます

ぎるのでその対比としてもよかった。

有馬稲子もいつも無表情のむつかしい役

だった、溌溂した明るい場面も見たかっ

た。この頃のほかの映画にもいえること

だが脇役が名優ばかりで、懐かしくもあ

り、それを見てるだけで楽しめる。

そんな暗いだけの映画ではない、そうい

う現実もある、とはいえ死ぬとは思わな

かったなあ。