三木卓「馭者の秋」再読

わたしのベスト何冊かの一冊で、ふとな

ぜその思い入れはなんだったのか確認し

たくなり、本棚を探したけど見つからな

くて引越しの時に処分してしまったのか

と再度入手し、再読したのだ。

そうそうこういう話だった、いや物語自

体はそれでいい、49才の父親が息子の

恋人の魅力に惹きこまれていく、しかも

危ないところまでいく話なので、魅惑的

な話ではあるがあくまで物語だからね。

なにが胸を打ったかといえば、彼が哲学

的にあるいは現実的にいろいろと考える

ところである。

今となれば男女の役割の固定観念もある、

女性蔑視もある(かなりひどい)、でも

当時はこんなものだったようにも思う。

彼は老いや死への恐怖がある、それを女

性への恋心で紛らわしているように見え

る。この歳になっても自分は未熟だと感

じる(これはまさにわたしと同じ)、そ

の他、いろんなところでわたしと似てい

ると思わせる、わたしが思っていること

はそういうことだったかと思わせる。

なんともいいがたい深く沁み込んでくる

困った小説であった、再読して昔よりさ

らに心酔したなんて困ったものだ。