前に読んだ「冷血」は単行本で、再読は
文庫本。高村薫は文庫化するとき大幅改
稿するというが、なにぶん細部は覚えて
いないなので気にはならなかった。
「我らが少女A」を再読したので、次は
「冷血」と思っていたので、ようやく、
時間がかかったしんどかった、読み終え
た。やはり重りを抱えたような読後感。
人が行動したことやったことをすべて説
明できるか、動機があるのか、いやない
だろう、すくなくともわたしは適当に暮
らしている、気分、説明なんてできない。
事件があって警察は徹底的に動機と背景、
何を考えていたかを究明する。警察内部
でどれだけ労力を費やし複雑な解明がさ
れていくのか(組織の人間関係を含めて)
これでもかと語られる。その詳細の記述
は圧倒的である。なのに被告には動機は
ない、気分しかない。
人間に潜む感情を作者はいけるところま
で追究したいのだろう、もう物語ではな
い、人とは何かとかの哲学のようなもの
ではないか。
殺された女学生、殺した男二人、そして
合田雄一郎、彼らの人生にすこしだけ入
っていけたように思える。重すぎてどっ
と疲れが出た。
追記:そういえば合田は時間を作って畑
仕事ボランティアに行っている。この畑
いじりが「土の記」につながる高村薫の
感心だったのだろうか。