ミハイル・バリシニコフ「ホワイトナイツ/白夜」

いつものことだがまるで知らなかった。

1985年アメリカ映画、冷戦が終わっていな

い時代、ソ連からアメリカへ亡命したバレ

ーダンサーが飛行機事故でソ連に不時着し、

ふたたびアメリカへ脱出する話。

主人公のミハイル・バリシニコフは、実生

活でもソ連からアメリカへ亡命した有名な

ダンサーで、虚実が交った演出、しかもア

メリカからソ連に亡命した黒人タップダン

サーが監視役となり、その逆バージョンが

話を重層化させ重いものになっている。

ソ連での恋人だったヘレン・ミレン、黒人

の妻になったイザベラ・ロッセリーニ(イ

ングリッド・バーグマンの娘、知らなかっ

た)、主題歌がライオネル・リッチー「セ

イ・ユー、セイ・ミー 」(大ヒットしたの

にこの映画の曲とは知らなかった)。

最初から最後まで張りつめた緊張感あり、

そのなかでバリシニコフのダンスが素晴ら

しく、黒人グレゴリー・ハインズ(知らな

い)とのダブルのダンスも見事で、これを

見られただけでもよかった。

冷戦下のアメリカの自由と戦争、貧富を比

べて、アメリカの優位性を描いてはいるが、

単純なプロパガンダ映画とは一線を画し、

自由の価値はなにものにもかえがたいとい

うことだけは確かであった。