合田雄一郎が7年ぶりに帰ってきた、とい
う惹句。「冷血」以来ということか。
「マークスの山」「照柿」「レディ・ジョ
ーカー」の3部作はとても堪能したが、そ
の後は哲学的な物語性のない世界に入って
いき、ようやく「冷血」で帰ってきた感じ。
そして新作「我らが少女A」である。
読むのを止められない。合田は活躍しない
し、犯人を見つけ捕まえるというミステリ
ーではない。殺人はあるのだがその周辺に
いる人たちの家族、生活、過去、内に秘め
る思いを丹念に描き出し、関係性を辿って
いく。殺人事件は犯人を捜して捕まえれば
終わりではなく、周りの人たちに多大な影
響を与えてしまう、そうなんだろう、しっ
かりと構築していると思っている暮らし、
家族、世間のなんと危ういことか。
それでも最後に、「少し早いけど、Merry
Christmas!」の連鎖、ささやかな希望がそ
こにある。事件は解決しない、それでも読
後の充実感はあり、ちょっと満ち足りた小
さな幸福感を持つ。
合田は本庁に戻りまもなく定年である、ど
うするのだろう、加納も生きていてほしい。