沢木耕太郎「銀河を渡る」

沢木耕太郎の全エッセイのようやく第三弾。

と思っていたら、巻末のあとがきにその顛

末が書かれていた。「路上の視野」が1982

年で、この重くて厚いエッセイ集はすごか

った。1993年に「象が空を」が同じような

重厚なエッセイ集でこれも満足した。当然

次はと思っているのになかなか出ない。そ

のうちノンフィクションからフィクション

に移っていって、孤高のノンフィクション

ライターから、いっぱいいる小説家になっ

てしまったような淋しさからいささか疎遠

になっていた。

今回、25年振りのエッセイ集が出て(書評

等は別のエッセイ集が出るようだが)すぐ

に単行本を買った。久しぶりに読んだ文章

は意外に癖があり、あれこんな文章の人だ

ったかな、格好よすぎ。

気にいったエッセイがいくつもある。

「芸を磨く」彼が落語研究会で落語を演じ

ていたことは知らなかった。

「キャラバンは進む」読んだ本と読んだこ

とがない本のどちらを大事か。

「ふもとの楽しみ」田辺聖子賛歌。

「岐路」危機の宰相という昔書いたが出版

されていなかった作品が彼の全ノンフィク

ション全集の中ででたときにどうしていま

ごろにと思ったものだ。それが解き明かさ

れる、そして彼の岐路になっていたことも。

ボクシング、スポーツの世界へ行かずに、

政治経済の方のみへ行っていたら、わたし

は同じようにファンで在り続けていただろ

うか。

堪能した。

 ところで、表紙の藤田嗣治の絵のタイトル

バガボンドだそうだ。

銀河を渡る 全エッセイ

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