沢木耕太郎「春に散る」(上)(下)

久しぶりに沢木の新刊「銀河を渡る」を読

んだら、その前の小説「春に散る」を読も

うという気になったので、図書館で借りて

きて一気に読んだ。

ノンフィクションの「一瞬の夏」とフィク

ションの「春に散る」とどうしても比べて

しまう。前者は事実しか書かないというこ

とでスリリングというか緊張感に満ちてい

るが、後者は自由に物語れるので脇役も生

かされて、伏線は回収され、展開が豊富で

あり、凝った構成だなと感心するが、あの

緊迫したものがない。それを望んではいけ

ないのだろう、これは沢木が経験したボク

シングの蓄積をすべて出しきった物語であ

る、しかも主人公は高倉健なのである。

60を過ぎて心残りなもの、悔いのような

ものを、かつての仲間たちと成し遂げよう

とするファンタジーである。同世代として

それでいいのだと思いたい。

 

春に散る 上

春に散る 上

 

 

春に散る 下

春に散る 下