司馬遼太郎「燃えよ剣」(上)(下)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)
燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)
上巻あたりはなかなかはかどらなかった。
というのも新撰組なり土方に思い入れがな
いためである。でも司馬遼太郎はこのとき
竜馬がゆく」と「燃えよ剣」を並行して
連載している、ということはある種比べな
がら書いていたのだろう。竜馬が大きな世
界感を持っていたのに比べ、土方はただ剣
に生きる、愚直に戦うということに賭ける。
下巻にはいって、京都から敗走していくあ
たりから湿った感じになっていく、司馬ら
しくない情緒的な感じである。近藤勇も土
方歳三も、いや幕末に命を落とした多くの
武士及び周辺の人達の、時代に巻き込まれ
た哀しみを読む。しかし幕府側にいて維新
後新政府で活躍する人達もいて、維新とい
う革命の後も多くの困難を乗り越えながら
の新政府だったのだろう。それが「翔ぶが
如く」につながっていくのか。