白石一文「永遠のとなり」

永遠のとなり (文春文庫)
もうこの作家には手を出さないつもりだったが。
主人公と子どもの時からの親友が、それぞれ「うつ」と「がん」になって、
故郷へ帰り暮らしている。その切実感と一方でふんわり感、そして生と死
に向き合うことで、私に強く語りかけてくる。だから、いつも登場人物が
嫌いなのに、この作家は手に取って読みたくなる。
私たちの欲望は細切れにされ、過剰なまでのサービスが用意され充足させ
られていく一方、もっと大きくて曖昧で分割できない大切な欲望が満たさ
れなくなっている。と書かれる。そして例として、のんびり自然とともに
生きたいとか、家族仲よく暮らしたいとか、本当に困った時は誰かに助け
てもらいたいとか、病気をしたらゆっくり休みたいとか、ひとりぼっちで
死にたくないとか、必要以上に他人と競いたくないとか、と書かれる。
大きくうなずく。
強くうなずく。