読み直す村上春樹その6「ノルウェイの森」

ノルウェイの森(上)
ノルウェイの森(下)
世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド谷崎賞
受賞して、本当に一人前の作家になったんだなあと思ってい
たところへ、1987年9月、上下巻でかつ赤緑の斬新な装
丁で、それも村上春樹本人の装丁ということで話題になり、
これも発売日購入。
87年といえば、今思えば好景気に沸いていて、仕事10年
結婚5年で、なんとなくこれからみたいな時。
はじめてのリアリズム小説とあり、羊も変なホテルも出てこ
ない、まっとうな恋愛小説を読んでるよう、村上春樹らしく
ないなあと思いながらも、なんとなく五木寛之の「凍河」を
思い出した。セックス場面も斬新でここまでリアルでいいの
かと心配になるくらいだったが、読み応えもあって面白かっ
たとしか云い様がない。ところがこれが爆発的に売れてブー
ムとなって、村上春樹イコールノルウェイの森というのは違
うと苦く思っていた。
さて、読み直して、やっぱり面白かった、一気に読んだ。
でもこんなに暗い話が大ベストセラーになるのはなぜだろう。
それから思っていた以上に70年前後の世界が色濃く反映さ
れており、若い人はこれをどのように読むのだろう。あの頃
ってこんな風景だったなあ、この程度に内省的だったなあと
いう感慨を持ちつつ、古くなっていないと思った。それにし
ても村上春樹の小説って、ユミヨシさんといい、この緑さん
といい、助演女優がほんとうにいいなあ、好きだなあ。