-070-金原瑞人「大人になれないまま成熟するために」

大人になれないまま成熟するために―前略。「ぼく」としか言えないオジさんたちへ (新書y)
ときどき自分が漠然と感じていることをずばり書いて
くれる文章を読むことがある。例えばこの本がそれで
ある。私の世代がポスト全共闘世代、いわゆる三無世
代だといわれ、闘争の残滓と敗北感の匂いを嗅いで、
壊すことも創ることもできず、ただ休息が必要な時期
に居合わせたということを書いてくれる。
そして、この年になって大人のふりをしているけれど
実はひそかに大人じゃないぞ若者なんじゃないかと考
えているような、そして大人にも親にもなれず、子供
には私は私なり君は君なりと突き放す態度に出て、し
かし私は君の少なくとも紛れのない選択肢の一つであ
りたいという気持ちを持つと正直に書いてくれる。
このような大人になれないという問題をこの本で考え
ていくのだが、もちろん結論はなく、私の例でいえば、
家族問題もうまくいかなかったし、成熟には程遠いと
いうことになっている。(105)