アラバマ物語

ちょっと、まいった。じわじわとこの映画を観た喜びが
こみ上げてくる。アメリカという国はこういう物語が
好きだ。とても独善的だという現実の裏返しとして
こういう物語があるといってしまえばそのとおりなの
だが、ほんとうによくできた映画だ。
感心したひとつは、勧善懲悪ではない現実社会を垣間
見る子供と、その子供を支える親、その親もその現実
から逃げずしかし声高に叫ばずできることをすこし
づつやろうとする、折合うことを教え、他者との接し方
を教える。そのきれいごとではない部分までみせていく
ところがすごいなと思う。できることなら、この父親が
完璧なのではなく、グレーの部分（例えばむしゃくしゃ
して酔払うとか）もあって他の住民と同じような人間だ
という部分をすこしでも見せてくれたらもっとすごかっ
たなと欲張りに思う。
もうひとつは、黒人の女中が子供を本気で叱る場面が
あって、これはえらいなとその家族の在り方を端的に
見せて感心した。
こういう映画が今つくれない、ということはみんなが
見ないということで、それだけ（複雑ではなく）複雑
そうな世の中になってしまったということなのか。