沢木耕太郎「天路の旅人」

ようやく読んだ、沢木の初版サイン本。

ひさしぶり(9年振り)のノンフィクシ

ョンだからか、先日も新聞のインタビュ

ーとNHKの番組に本人が登場して本の

紹介があった。

大作である、第二次世界大戦の後半、国

密偵として中国、蒙古、チベット、イ

ンドへ侵入する。いわゆるスパイのイメ

ージではない、旅人などというイメージ

でもない、きわめて過酷な冒険家、修行

僧としかいいようがない、想像を超えて

いる。密偵という仕事というよりただ新

しい土地を知りたいという好奇心だけの

ようだ、それが旅人なのだ。

地理、地名がよくわからないので私の理

解が足らないように思う、でも中国から

インドへおよそ徒歩で行くというのはも

う想像できない。

文章は淡々としている、インタビュー元本

元原稿に沿って丁寧に辿っているようだ。

無理に感動、感嘆の場面を作らないことが、

それゆえにすこしものたりなかった、と欲

張りな感想も持った。

 

映画「セントラル・ステーション」再見

テレビで放映していたので録画して再見。

1998年ブラジル・フランス映画。

20年近く前に見たのだろうか、わりと覚

えている、主演のフェルナンダ・モンテ

ネグロという女優がやっぱりすごい、ず

るくていかげんで貧しい代書屋を普通の

ように演ずる、最後までいい話いい人に

ならない。ブラジルの辺境の地にカトリ

ックが強く受け入れられている、だから

こそというべきか。

繰り返すが、この年のアカデミー外国語

映画賞候補は「ライフ・イズ・ビューテ

ィフル」と「運動靴と赤い金魚」とこの

作品、レベル高すぎる。

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映画「ガーンジー島の読書会の秘密」

2018年英仏映画。ガーンジー島はどこだ

ろう、調べてみるとイギリス国王直轄地と

いいながらイギリスよりもフランスに近い

シェルブールの傍の島であった。だからイ

ギリスなのにナチスドイツに占領された島

なのだった。そこで秘密の読書会がありさ

らに秘密があった。

よくできた展開、うまい(やっぱり原作が

あった)、住民の女性が占領したドイツ兵

に恋をする、この女性はドイツ人だから悪

いと単純に考えない、だから収容所でも他

人を守って犠牲になる。そんな女性の子供

を守る秘密。

まるで知らなかった映画だが感銘した、い

い映画だった。主人公の作家に就く編集者

がかっこよかった、婚約者のアメリカ人は

アメリカ人だった。

 

 

小津安二郎「お茶漬の味」

この冬、小津2作目、1952年作品。

木暮実千代である、テレビの悪女役とい

うイメージだったがこれは適役、見事。

夫は佐分利信、若い佐分利信ははじめて

見た。冷徹な渋い男というイメージだっ

たが純朴な懐の深いいい男、当時こんな

ものわかりのいい男がいるかと疑うほど

いい男だった。

鶴田浩二も若い、渋くないぴかぴかの二

枚目俳優だった。往年の有名俳優の若き

頃を見てるだけでおもしろかった。

最後に夫婦で台所へ入ってお茶漬の準備

をするのだが、なんと大きな電気冷蔵庫

がある、驚く、1952年に大型電気冷蔵庫

だぞ。我が家ではきっと幼稚園の頃にや

っと下に氷を入れる小さな四角い冷蔵庫

だったのに。しかも中に30cmくらいの

でかいハムがあるのだ、驚く。

まあ本筋とは関係ないのだが、温泉旅行

もパチンコも競輪もウルグアイへの海外

出張も、どれもこれも新鮮、驚きだった。

すれ違っていた夫婦がお茶漬を通してよ

うやく相手のことを理解するという他愛

もない結末なのだが、やっぱり木暮実千

代だから活きた結末だった。

まだテレビがない時代の映画館で観るホ

ームドラマだったんだろう。

 

ワクチン5(覚書)

ワクチン5回目を打った、3か月という

けどあまり信用せず5ヵ月待って。

ファ×5である。

翌日37.1℃の微熱、肩は打ったと

ころは痛いが自由に動く。念のため外

出せずぶらぶらしていた、やる気も起

きず。明日からは通常に戻る。

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賈樟柯「長江哀歌」

中国映画はほとんど見ていない、ジャ・

ジャンクー(賈樟柯)監督といってもま

ったく知らない、新しい世代の監督なん

だそうだ。

長江にできる三峡ダムのために都市や村

が沈み110万人の住民の強制移住があり、

その人たちの哀しみを描く。

日本でも同じような開発があったが、そ

の何倍も何十倍もの大開発が行われたよ

うだ、それをドキュメンタリーのような

静かな映像、絶景と廃墟とで見せる。

途中、ビルがロケットとして飛び立つと

いうSF的な映像が挿入され突然で驚くの

だが、よく考えると110万人が故郷を追

われることのほうが驚きで、それに比べ

ればロケットが飛ぼうがUFOが来ようが

たいしたことがないという哀しみなんだ

ろう。妻は帰らず娘には会えずほとんど

物語はないのだけど最後まで見てしまった。

ヴェネツィア金獅子賞受賞作品、2006年

中国映画。

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吉本隆明「夏目漱石を読む」

「猫」が読み進められなくて中断。買っ

てあった評論というか講演録を読む。

吉本隆明は興味を持った作家については

とことん読む尽くす、読み解くそうで、

漱石を一級の作家として評価しているこ

とから読んでみた。講演録をベースにし

ているので読みやすかった、漱石の生い

立ち、性格、病歴、日本の近代化の荒波

等が作品に強く反映されていることをあ

らためて知る。男女の三角関係を多く書

かれているが、不倫小説とはならず、男

男女の男男が友人や近しい人であること

の葛藤が書かれていると、なるほどそう

だね。やっぱり「三四郎」「それから」

「門」が深いものがあり、「明暗」が新

しいというところですね。

ついでに吉本隆明「わが昭和史」も読む。

アンソロジーのようだ、三島由紀夫のこ

とや反核のことや、異論もあるにしても

いつも孤高で屹立しているところが立派

だと思う。まあこういう読みやすいもの

しか読めません。

わが昭和史

わが昭和史

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