是枝裕和「怪物」

2023年、是枝監督、坂元裕二脚本。

伊藤みどりのaquaから、怪物のaquaを知

り、重い話のようでためらっていたがよ

しと見ることにした。

3つの視点を変えて物語は違ったものに

見えるのは当然で、人は善悪ばかりでな

く、事件は一面だけではないことを再確

認する。これだけで作品になりうるのだ

が、一方で、少年の友情あるいは少年期

の好きという感情が性的マイノリティに

繋がっていくひとつのテーマ(隠れテー

マ?)が世間でざわついたようだが、ま

だ繋がっていない、まだなんなのかわか

っていない時期の物語というふうにわた

しは捉えた。

この映画にはなにを意味しているのかわ

からない場面やちいさなディテールがと

ころどころにあって、なんだろうとひっ

かかりながら見た、未消化のまま。もち

ろん画面のすべてがわかるような映画は

好きではないのだが。

ラストに柵を越えて駈けていく、これは

現実なのかと思ったところへ、坂本龍一

のaquaが流れる、そうだ、これは明日に

向けて駈けていると素直に思いたい。生

まれ変わったのかなと聞いてもとのまま

だよと答える、でも少年期を越えたのだ

ろう。

aquaは泣ける。