読了する。
元になった「街と、その不確かな壁」は、
1980年夏に雑誌広告で見て書店で「文學
界」を手に取ったことを覚えている。で
もここで立ち読みするわけにはいかない、
単行本になったら買うのだと、すでに期
待の作家だった。そのうち作家本人が失
敗作だったとお蔵入りしたところ、なん
と40年を経てもういちど書き直して、
書き足して上梓したのだが、実はもうひ
とつの書き直し作品「世界の終りとハー
ドボイルドワンダーランド」があり、結
着をつけていたと思っていたので、いさ
さか変則的な話だなと思った。
とはいいながら何年振りかの長編なので
すぐに読みはじめ、3日かけて読了。
いつもの壁抜けの話、無意識の世界か奥
深い影の世界に入っていく話、同じよう
なテーマをバリエーションを変えて物語
る、大江健三郎のように。
平易な文章で読みやすい、引き込まれる、
どんどん読みすすむ。途中から魅力的な
女性が登場する、会話がいかにも彼らし
い、それで初恋の少女をどうやって乗り
越えていくのかと思っていたらそうはな
らず、置いてきぼり。
なにかわからないけど心に重く残る読み
応えはあったが、なんだか置き去りにさ
れた感じは否めない。
しばらくしてもういちど読もう。