松家仁之「光の犬」

光の犬
ゆっくりと丁寧に読んだ。
北海道の家族の歴史、大きな事件もないが
普通の生活のなかの喜びや悲しみが静かに
語られる。祖母である産婆によって孫が生
まれるとき、そして、父と姉妹と孫の亡く
なるときの描写からこれは生と死の物語な
のだとわかる。「よくいらっしゃいました」
には強い希望がある、そして最後に「光の
犬」の意味がわかる。
物語の中で歩と始と一維は確かに生きて、
私と交感した、そういう静謐な感情の揺ら
ぎを堪能した。