若いときのいろいろな小さな糸をずっと引きずって、それを
どう消化させて生きていくかは人それぞれだけれど、それが
初恋だったりすると、物語になるということだ。
田中裕子がカラマーゾフの兄弟を読んでいて、そのストーリーが
共鳴しているそうだが、私は読んでいないのでそこはわからない。
それがラジオ局へはがきを出すことになり、母を赦し、岸部一徳を
赦していくことに繋がるらしい。しかし、岸部一徳が、父の絵を
処分して、妻を最期まで見送って、それで、田中裕子に向き合える
というのはよくわからない。その挙句、30余年の年月は、あんな
激情に結びつくしか方法はないのだろうか。そこは疑問。
しかし牛乳配達する田中裕子とその街の空気はすばらしかった。
そして、あの本棚をエンドロールでちらっと見せて、それ以上
見せないのが、未練を残させて、憎い演出だった。
おまけ:「夜のピクニック」の和解と少し似ているなともなぜか思った。