岸井ゆきの「ケイコ 目を澄ませて」

2022年、キネ旬1位作品。気にはな

っていた、予想に反して劇的なことは何

も起こらない映画だった。「エール!」

や「コーダ」とは違う、「名もなく貧し

く美しく」でもない、ボクシングを趣味

として、いや生きる糧として普通の生活

をしていく。

感動があるわけではない、お涙があるわ

けではない、ボクシングのトレーニン

の繰り返し、基礎練習の繰り返し、ラン

ニングの積み重ねが普通の生活を成して

いく。

岸井ゆきのの顔のアップ、横顔のアップ

が頻繁にでてくる、いつも無表情で強い

意志と、そう目ジカラを感じる、しゃべ

れないので余計に。

ラストで街の風景の雑音がこんなにうる

さかったのかと気付く、そこでの孤立か

ら彼女は立ち直るのだろうか、答えは提

示されない。いい映画だったとはすぐに

は言わない、じわっとあとからどう思い

出すか待つ。