池澤夏樹「双頭の船」

双頭の船 (新潮文庫)
震災を扱った小説というので、単行本が出
た頃はまだためらいがあったのだが文庫に
なったのでようやく読んだ。
ファンタジーである。こういう表現でしか
まだ書けなかったんだろうなと慮る。奇妙
な話からはじまり、船が現れそれがどんど
ん大きくなってくるあたりから壮大なファ
ンタジー感が楽しい。いろんなエピソード
がきっと作者が被災地通いをした経験から
来たと思われリアリティもあり。
さくら丸というから安部公房の「方舟さく
ら丸」と結びつけてしまうが、もう30年
近く前に読んだ本なので実際は繋がらず、
関係があるのかなあ。
亡くなった子供たちが現れて去っていくあ
たりから、船の方針の相違が現れたり、話
がどんどん動いていって、あっという間に
終わってしまった。もっと読みたかった。