岸井ゆきの「ケイコ 目を澄ませて」

2022年、キネ旬1位作品。気にはな

っていた、予想に反して劇的なことは何

も起こらない映画だった。「エール!」

や「コーダ」とは違う、「名もなく貧し

く美しく」でもない、ボクシングを趣味

として、いや生きる糧として普通の生活

をしていく。

感動があるわけではない、お涙があるわ

けではない、ボクシングのトレーニン

の繰り返し、基礎練習の繰り返し、ラン

ニングの積み重ねが普通の生活を成して

いく。

岸井ゆきのの顔のアップ、横顔のアップ

が頻繁にでてくる、いつも無表情で強い

意志と、そう目ジカラを感じる、しゃべ

れないので余計に。

ラストで街の風景の雑音がこんなにうる

さかったのかと気付く、そこでの孤立か

ら彼女は立ち直るのだろうか、答えは提

示されない。いい映画だったとはすぐに

は言わない、じわっとあとからどう思い

出すか待つ。

 

 

一宮市博物館「版画芸術展」

所蔵品による企画展として、棟方志功

の版画作品の展覧会を見てきた。

戦前は「新版画」(伝統的な分業による)

と「創作版画」(すべての制作を自分で

行う)との二手に分かれ、前者は吉田博、

川瀬巴水らが、後者は棟方や現代の作家

につながっていると理解しているのだが、

どちらにしても新しい表現を目指してい

る。あらゆる手法があり、版画はやっぱ

りおもしろい。

ケヴィン・スペイシー「ユージュアル・サスペクツ」

1995年アメリカ映画。

俳優のキャラ、イメージにひっぱられる、

ケヴィン・スペイシーは大事な役どころ

と予想できたし(当たり)、チャズ・パ

ルミンテリは実は最後に裏切るんじゃな

いかと心配してたし(ハズレ)、「ブラ

ス!」のピート・ポスルスウェイト(名

前は知りませんでした)が出てきた時は

それだけでびっくりしたし、とにかく個

性の強い俳優ばかりでおもしろかった。

ところで、ケヴィン・スペイシーはいま

はどうなっているのか、追放かな、やれ

やれ。

 

 

 

撃たれた。

NHKアナウンサーだった人が、100分de

名著で「生きがいについて」を扱い、そ

れを読んだことをきっかけのひとつとし

NHKを辞めて医者になったという記事

を読んだ。

ちょっと撃たれた。

自分らしくなくというのをわたしの今の

テーマにしている、こんな大きな決断が

できるわけがないが、ちいさなことだっ

てと励まされた。

図書館で神谷美恵子「生きがいについて」

を借りてきた。ハンセン病に尽くした医

者、クリスチャンということは知ってお

り、みすず書房の静謐な装幀の本は知っ

ていたが、手に取るのははじめて。

 

映画「花椒(ホアジャオ)の味」

2019年香港映画。

すみません、中国映画と香港映画と台湾

映画の特徴がわかりません。

香港、台北重慶と別々に育った異母三

姉妹が、父親の葬儀でお互いの存在を知

り、出会い、父の中華料理店を継ぎ手伝

うことで家族というものに向き合う。

この中国と香港と台湾の関係は突っ込ん

ではいけないような微妙なものがあると

思うが、その体制的なことは触れること

なく、異母三姉妹が溶け合っていく映画

である。

2019年なのでまだ香港はいまほどで

はなく、台湾も同様である、こういう映

画が作れた稀有の時代だったなんてこと

になりませんように。

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新書「書物の達人 丸谷才一」

集英社新書「書物の達人 丸谷才一」をブ

ックオフで見つけて、こんな本が出てい

たのかと読んだ。

丸谷才一に係る講演録で、川本三郎、鹿

島茂。湯川豊らによるものである。

丸谷才一モダニズム文学といわれてい

るが、モダニズムというのがいまひとつ

わからない。市民小説でもあるのだが、

こういうのが私の好みである。

ktoshi.hatenablog.com