登山家田部井淳子さんの伝記フィクション
である。沢木耕太郎の「凍」を読んだ時も
極限の山登りそのものに感動は感じなかっ
たが、これも同じ、その苦しみと喜びは共
有できない。
しかし、田部井淳子の魅力はおおいに共感
する、こういう大いなる人がときどきいる
ことに感動もする。
女性だけの山岳会、登頂を目指す。チーム
を組んでも山頂に届くのはひとりかふたり、
あとはサポートにまわる。
男も女も関係なく人としての競争、葛藤、
嫉妬、決断がそこにある、あって当然、で
もどこかで受け入れてチームとしての喜び
に変えていくこと。仕事だって同じ。
そういうところもさらけだして小説は書か
れている。だからいいことばかりではない。
夫がいい、軽やかに乗り越えていく男(夫)
の姿がいい、すばらしくいい。