丸谷才一「笹まくら」再読

昔に読んでわたしのオールタイムベストい

くつに入る大事な小説を再読。

現在(といっても60年代)と戦争中を行も

空けずいったりきたりする、現代がちょっ

と冗長すぎるなと思いながら読み進めるが、

次第に戦争中の忌避中のディテールが明ら

かになってきて、後半から読むのを止めら

なくなってくる。

徴兵忌避は自分が殺されるのが怖かったの

でなく敵を殺すのが嫌だったと云う、思想

的でも理論的でもなく信条でもなくこころ

の良心みたいなもの。昔、良心的兵役拒否

の本を読んだことがある、いまは各国でそ

の権利が認められているが、一方で個人的

な罪の意識についてもよくわかる。

丸谷も召集され(二等兵、東大卒ならすぐ

に将校になれるのに)辛酸をなめたようで、

徴兵忌避をしたらという「if」を小説にし

たのだろう。単に戦争反対ではない、人間

と国家、歴史の不条理を個人の丹念な生活

の記述(ユーモアも交え)によって描いた

ものと再読してあらためて思う。

やっぱり傑作。

戦場のピアニストからの流れで読んだ)

笹まくら (新潮文庫)

笹まくら (新潮文庫)