とんでもない本を読んでしまった。この衝
撃はちょっとすぐに言葉にならない。
シューベルトの歌曲「冬の旅」から章立て
して、「孤独」「回想」「カラス」「郵便
馬車」「春の夢」「凍結」「幻」「菩提樹」
「鬼火」とある。フィッシャーディスカウ
を思い出す。
主題は「私は別様に生きえたのに、このよ
うにしか生きえないのは何故であるのか」
である。物語は息もつかせぬほどに疾走す
る。現実社会の事件を絡ませ、大阪等の地
名が頻繁にでてきてその土地の匂いも絡ま
せ、男の人生を、関係した女や男を描きき
る。男の心理描写や思索はほとんどない、
自分で選んだ選択と選べなかった選択、ふ
りかかってきた選択により男は堕ちていく、
自己責任なんて簡単な言葉で責められない。
どうしようもない救いのない物語なのだが、
悪人正機のことがよくわからなかったし、
必ずもういちど読むだろう。