辻原登「許されざる者」（上）（下）

辻原登の大河ドラマ的長編小説、堪能した。

なにから書こうか、書けないほどエピソー

ドが盛り沢山で、登場人物がそれぞれ生き

生きと描かれる。

日露戦争前後の和歌山の森宮（新宮か）を

舞台に、毒取ルといわれる医者の波乱万丈

の物語。大逆事件で無実の罪で刑死した新

宮の医師大石誠之助がモデルらしいが、こ

の毒取ルは警察とも任侠ともうまく付き合

いながら日本医学の向上に努めかつ貧しい

人達を救っていく。森鴎外や幸徳秋水やジ

ャック・ロンドンなどが物語に絡んでフィ

クションを厚くしている。さらに人妻との

恋もあり、まさに大河小説である。

許されざる者 上

許されざる者 下