成瀬巳喜男「浮雲」

日本映画不朽の名作のひとつと云われてい

る「浮雲」をようやく見た。森雅之はよく

知らなくて、高峰秀子二十四の瞳と名も

なく貧しく美しくくらいしか知らないのだ

が、話もいわゆるメロドラマ、淡々と堕ち

ていく。戦後の混乱の中で生きる目的を失

った男と女、特に男はほんとにダメ男、森

雅之のダメ男振りは「夫婦善哉」の森繁久

彌とは違い陰気なダメ男、さらに美しい高

峰秀子も投げやりでどうしてひきずられて

いくのか、でもそういうものなんだろうな

とよくわかる。ただそれだけの話なのに後

を引く感覚というのが名作の所以なのか。

でも戦後の貧しい時代を知らない人たちに

とって名作でありつづけられるだろうか。

浮雲