大江健三郎「M/Tと森のフシギの物語」

「燃えあがる緑の木」から遡って谷間の森

の話を読んできたので、次は「同時代ゲー

ム」なのだが、これは昔読み通すことがで

きず挫折した本なので、その代わりに「M/T

と森のフシギの物語」を読んだ。

これは「同時代ゲーム」が出た時に難解、

むつかしいとの評判になり、それなら少年

でも読めるようにと同主題を変奏させた小

説でこちらも刊行時に買って読んだ。

だから再読。谷間の森の神話と歴史が語ら

れる、壊す人やオシコメやメイスケサンと

いった繰り返し出てくる主役の活躍と死、

その土地の神話性が世界の多様性を示して

くれる。

また、メイスケサンの頭の傷と主人公の頭

の傷、息子の頭の傷がつながってそれぞれ

の生があり命がつながっていくという語り

はたしかに感動的であった。

万延元年のフットボール」とこの作品が

ノーベル賞の対象作品であったらしい。

M/Tと森のフシギの物語 (岩波文庫)