近藤洋太「辻井喬と堤清二」

辻井喬と堤清二
78年に会社に入って東京出張があるといま
はなきシティロード(ぴあ派ではなかった)
をみながらうろうろしていた。そのなかで
80年代の流行の最先端、西武文化にうかう
かとだまされる。しかし池袋西武のリブロ
の書棚は見たことがないような棚でそれを
眺めているだけで新しい文化に触れるよう
な気がした。その総師が堤清二であり、異
端の実業家であり、かつ辻井喬として詩人
であるというのでずっとを注目してきた。
この本は詩人としての辻井喬に寄った評伝
である。
堤清二鶴見俊輔と出自がなんとなく似て
いて、特異な父や母、一族に反発すること
からそれを乗り越えていく複雑さが深く影
を落としている。両者ともに、ある種の誠
実さと懐の大きさに注目し敬意を持ってい
たのだと思う。