池澤夏樹「アトミック・ボックス」

アトミック・ボックス
震災3年に読んだのは、そこから触発され
て書かかれた一冊。池澤は強く脱原発を訴
え、そこに至る価値観を語っているのだが、
この小説もそれを芯にして書かれた。
前半のストーリ展開は、上等なサスペンス
小説のよう、ディテールにこだわってぐい
ぐいと読んでいく、さあどうやってまとめ
るのだろうと心配になる。しかし、結末は
世界の重み、厚みを受け入れて、たぶん作
者も深い思索の末の結末であったのだろう
と思う。あらゆるものごとは二者択一では
ないのだ。
さあ、池澤には、沖縄も震災も原発もそれ
ぞれ作品にして、次はもっと大きな物語
読みたいものだ。