庄司薫「薫くん四部作」

赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)
白鳥の歌なんか聞えない (新潮文庫)
さよなら快傑黒頭巾 (新潮文庫)
ぼくの大好きな青髭 (新潮文庫)
なぜか新潮文庫で再登場の「赤頭巾ちゃん
気をつけて」「白鳥の歌なんか聞えない」
「さよなら快傑黒頭巾」「ぼくの大好きな
青髭」の四部作をまとめて読み返した、ざ
っと40年ぶりか。
私が中学3年の時(1969)に、「赤」
芥川賞を取ってマスコミをにぎわしてい
て、高校へ入って読み始め、1977年に
最後の「青」が刊行され、「赤」を除けば
発売と同時に読んだという記憶。
お手伝いさんがいるような中産階級で東大
へ入るのが当然との環境の中で、そこで得
られた「知」をどうするのかなどと考える
なんという優雅さ傲慢さ、なんだこいつは
との反発と共感。
しかし当時作者のエッセイを読んでいくと、
これらは当時の学生運動を総括することで
「知」を取り戻そう、特に若い人たちに向
けて、という小説なんだと理解することと
なった。
普通は「青」青春からはじまり、朱夏、白
秋、玄冬とくるのだけど、ここでは「赤」
からはじめ、最後に「青」を持ってくるこ
とで未来を拓くように構成するかのような
大きな四部作となっているのだと。
そして、再読。
文体は思っていた以上に饒舌、しゃべりす
ぎる、すこし閉口、読み続けるのがしんど
い、政治小説だという人がいるんだけどな
るほどなとも、メッセージはいまになると
ストレートすぎるかな、60近くになった
私にはそんな感想を持つに至った。
あのころ「知」の力を信じた人たちはどう
しているのだろうか、「知」にどこまで力
があったのだろうかとの感慨も持つ。
あれから小説を書かなくなった作者もどう
思っているのだろうか。