城山三郎「部長の大晩年」

部長の大晩年 (新潮文庫)
永田耕衣という有名な俳人(知りませんでした)が、
大企業の部長まで勤め上げ、しかし在職中から俳人
道を歩みはじめ、退職後はその道に大きな花を咲かせ
た、実在の人物を題材にした小説。リタイヤ後の人生
への興味から読んだが、これはそのような一般人の人
生ではない。同じ俳人の尾崎放哉を題材にした吉村昭
の「海も暮れきる」をかつて読んだが、エリートだっ
た放哉が酒におぼれつつプライド高く周りに迷惑をか
けて俳句を詠むのに嫌悪感を持ったものだが、それに
近い激情型の人生を生きた。でも企業を勤め上げ、夫
人をいつも連れて出かけるとか普通の生活者でもあり、
その複雑さに城山は魅かれたのだろうか。