読み直す村上春樹その5「国境の南、太陽の西」

国境の南、太陽の西
1992年10月発売、ダンスダンスダンスに続く何年か振りの
新作だった。92年とは、38歳、仕事もばりばりの頃で、子供も
7歳と3歳、いろいろと忙しく、待ちに待った新刊をすぐに買って
読んだのは変わりないが、大作という雰囲気がない作品だったので
印象がなくあまり記憶が残っていない。
さて、読み直しとして、本当は、世界の終わりとノルウェイを読ま
ねばならないのだが、世界の終わりは落ち着いて読まなきゃという
気分だし、ノルウェイはなんとなく読みたくないし、結局飛ばして
次へ進む。
「国境の南太陽の西」。まるでストーリーの記憶がない、まったく
新刊を呼んでいる気分。で、びっくりした。沁みるなあ、この喪失
感は堪えるなあ。せつないなあ。リアリズムの小説なんだ、羊もダ
ンスも好きだと書いたが、ひょっとしてこれが一番かもしれない。