池澤夏樹「光の指で触れよ」

光の指で触れよ
とても好きな本「すばらしい新世界」の続編が、読売新聞で
連載されていたが、ようやく新刊として店頭に並び、早速
購入して、ゆっくり丁寧に読む。
違和感。
林太郎は、風力発電エンジニアで、きわめて魅力的な人物で
あるが、新しい恋をして(不倫とは云いたくないが)、
すばらしい新世界では理想的な夫婦像をみせていたアユミが
家を出ていくのである。
あんな流れで恋をしないなんてありえないと林太郎には同情
するのだが、結末でアユミが許すとというのも安易のように
思える。もっとぶつかりあうべきじゃなかったか。
やはり再生の物語なんだろうか。
また、リベラルな考えが、農業や精神世界に導かれていくと
いう展開を私は感心しない。
それでも違和感を抱えて、やはりこの作家は読む価値がある。