-002-辻井喬「父の肖像」(上)(下)

父の肖像〈上〉 (新潮文庫)
父の肖像〈下〉 (新潮文庫)
かつてのセゾングループ経営者であり、詩人・小説家で
ある堤清二が、自分ことだけでなく父親、堤康次郎
正面からとらえる。大きな話題になった小説だが、よう
やく文庫になり読むことができた。
もっと父親の伝記的要素と親子の葛藤が中心と思われた
が、これは母の肖像あるいは父親の妻(女)の肖像で
あった。どこまで本当のことで、どこまでフィクション
かわからないが、ときどき作者が文中に現れてくる
文章は違和感がないけれど、もっと効果的に使えたん
じゃないかとなんとなく思う。
骨太の伝記を期待していたが、直球勝負ではなかった。
まだ、書くことはいっぱいありそうで今後にも期待。