鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二「戦争が遺したもの」

戦争が遺したもの
すこしづつゆっくりと読み終えた。
鶴見俊輔に戦後世代が聞くという副題があり、小熊英二という
新進の学者が戦前から戦後を通じてまさにすべてを真正面から
聞き出していく。それに対して鶴見俊輔の話、すなわち彼の
生き方は一本芯が通った上に、その芯は柔軟なあいまいさを
もつ懐の深いものであり、しかもヤクザの仁義だとの矛盾も
露わにして、そのやりとりは刺激的である。
それに上野千鶴子がときどき執拗に問い詰めてくる、と
思うとインターメッションのときのこまやかな敬愛の会話が
楽しい。もっと読み続けたかった。
しかし、これだけの思索と行動、そして小熊英二が学問として
調べ述べられた知識人たちは戦後60年にどれだけの影響を
与えたかという疑問は私の中では重い。