三浦しをん「仏果を得ず」

三浦しをんのお仕事小説は、いつも知ら ない世界をみせてくれ楽しみなのだが、 ようやくここにたどり着いた。 文楽の世界である。大阪に18年も居たの に国立文楽劇場で文楽を観たのはわずか 3回である。他の太夫の声、語りもよか ったのに住太夫を聞いたら素…

高村薫「地を這う虫」

高村薫の短編4作品を収めた短編集。 短編ははじめて読むんじゃないか。 元刑事、なんらかの理由で刑事を辞めた 男の物語、これはこれでいいんだけどや っぱり重厚な長編に仕上げて圧倒的な物 語を読みたいと思いました。 さて長編「土の記」がまだ手に取っ…

北村薫「遠い唇」

北村薫も久しぶり、こんな文庫も出てい たのか。短編集、どれも楽しく読んだ。 が、乱歩の二銭銅貨とかもう忘れている のでそれに絡む話はよくわからず。「冬 のオペラ」の巫弓彦が出てきたのには驚 いた、こちらもどんな話だったかな。 ああ、どんどん忘却…

中村好文「好文×全作の小屋づくり」

電線や水道管やガス管がつながれていな い小屋、自前だけで暮らしていける小屋 のような家をクライアントの全作さんと 設計士の中村好文がともに知恵を出し、 探し、集め、作る。その過程を含めて紹 介した本。 ここまでやるかというところもあるが、 ひとつ…

高野文子「るきさん」

朝起きたら、ぎっくり腰である。 昨日はワクチンで一日ごろごろ寝ていて 身体が固くなっていたからだろうか。 最近の腰痛は坐骨神経痛なのだが、ぎっ くり腰は久しぶり。ワクチンは37.3℃の微熱が今日も残っており踏んだり蹴ったり。 こういうときは楽しい本…

芦原伸「西部劇を読む事典」

西部劇の関する本を図書館HPで検索して、 (意外と解説本がない)これかなと借り てきて読んだ。西部劇の先入観、偏見は 大量に作られたB級映画からきているよ うだ、昔からインディアンと折り合う映 画も決闘をしない映画もあったし、ジェ ームズ・ステュア…

池澤夏樹「スティル・ライフ」再々読

ちょっとなんだかなという時は、気持ち の落ち着く静謐な本を書棚から探しだす。 今日は「スティル・ライフ」、再々読。 自分の中の広い世界に耳をすます、たと えば、星を見るとかして。 もうひとつの中編「ヤー・チャイカ」も たのしく読みました、今回も…

藤原伊織「蚊トンボ白髭の冒険」

藤原伊織は2、3冊読んだが、どれも面 白かったのでこれも読んでみた。 蚊トンボが青年にとりついて経済がらみ でやくざと戦うという話なのだが、ユー モアもあって面白かったのであまり言い たくはないのだが。 青年の陸上の挫折の話が中途半端、彼女 は魅…

澁澤龍彦「快楽主義の哲学」再読

2022年の8月である。 猛暑、少し散歩するだけであとはエアコン内で生息している。 働いていた時は暑くても雨でも毎日仕 事に出かけたことがいまや信じられな い。そんなだから新聞をゆっくり読む時間があり、結果いつも気分が滅入る。でもこんなにとっちらか…

門井慶喜・万城目学「ぼくらの近代建築デラックス! 」

お二人の近代建築についての対談集。 実際に建物を見に行っての対談なのでわ かりやすいのだが、もっと写真があれば 建築の良さが理解できるのだが残念。 行ったことがあるところはいろいろあり、 行ってみたいところもいくつかある、ヴ ォールス建築はきち…

高村薫「我らが少女A」再読

ちょっと重いものでも読もうと、そうい えばストーリー重視で読んだ「我らが少 女A」をきちんと読もうと再読。時間が かかりました。 なんといっても合田雄一郎、でも警察大 学校の先生となっていて現場にいないの で、直接事件の解決をするわけではない、 …

清水義範「夫婦で行く意外とおいしいイギリス」

夫婦で行くシリーズの4冊目。まあ、旅 行記は団体ツアーなのでたいしたことな くて、メインは俄か勉強したうんちく話。 ここではイギリスの国王の変遷、まるで わからない、読んでもわからない。高校 時代、世界史の先生は清教徒革命とか名 誉革命とかスコッ…

永田和宏・河野裕子「たとへば君」

永田和宏に関心を持ち、つぎは「たとへ ば君」。夫婦ともに短歌をつくることで ともに暮らした人生を振り返ることがで きるというのはうらやましいことだ。短 歌あるいは言葉があって、そこに絡みつ いている思い出は深い。 短歌もよくわからない短歌がある…

アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(下)

図書館から即刻借りてきて下巻読了。 ページが止まらず、途中の物理学、化学 等の文章はわからなくてもすっとばして 読み進める。宇宙船の構造も、ビートル ズの仕組みもよくわからないがお構いな く読み進める。トラブルは続出だけど、 二人でなんとか解決…

原田マハ「リーチ先生」

所用があって大阪へ行ってきたので電車 の中でずっと「リーチ先生」を読んでい た、大作、文庫588P。 しばらく前にテレビで大分の小鹿田焼の ことをやっていて、民藝、リーチ等関係 を紹介していたことから、待機していた 「リーチ先生」を読むのは今だと思…

アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(上)

朝日新聞の書評欄でひっかかって図書館 で注文し、まず上巻を読んだ。 アンディ・ウィアーは映画「オデッセイ」 の原作「火星の人」の作者、「オデッセ イ」はなかなかエキサイトした映画だっ たので、これは期待できると読んだ。 読みやすい、ユーモアがあ…

五木寛之「作家のおしごと」

五木寛之の「親鸞」が積ん読待機中なので、その前にエッセイ集のようなものを読んだ。 60年代からあるゆるところで目にしてい たが最近は仏教関連と人生論ばかり。も ういちど圧倒的なストーリーを読みたい ものだ。 作家のおしごと 作者:五木 寛之 東京堂出…

100分で名著「砂の女」

安部公房はある時期立て続けに読んだ、 「砂の女」も新潮社の書下ろし純文学作 品として箱入りの単行本で読み、書棚よ り引っぱり出して奥付けを見ると1974年 に読んでいる。(なんと装画が香月泰男 だった) 「箱男」や「密会」や「方舟さくら丸」 みんなこ…

辻原登「枯葉の中の青い炎」

さあ、続けて短編集、全6編である。 「ちょっと歪んだわたしのブローチ」 ミステリーのようでホラーのようで、夫 の我儘に妻が正気か狂気か堕ちていく話、 強い余韻が残る。 「水いらず」 ロッジの管理人が匂いに反応し幻覚を見 て現実が揺らいでいく。 「日…

津野海太郎「かれが最後に書いた本」

webの「考える人」で連載していた原稿 を中心としたエッセイ集。最後の本と云 っているがまだまだ大丈夫。 文章が芸になっている、面白い、80年の 人生の蓄積からの交友、経験が滲み出て いるといえる。うらやましい限り。 かれが最後に書いた本 作者:津野 …

辻原登「隠し女小春」

辻原登の新作である。 タイトルからおかしい、装丁の絵も純文 学とは思えない、奇想の物語である。 リアルドールを愛玩する男がリアルな女 性と付き合いだし、その嫉妬から人格を 持ちはじめ、最後は心中天網島よろしく (なんといっても小春だからね)心中…

永田和弘「あの胸が岬のように遠かった」

なんとなくわかる60年代の典型的な青春。 なんと赤裸々な青春記なんだろう。 NHKのドキュメンタリで永田和宏のこの 本の話を見たのだが、その後それのドラ マ化が放送され、さすがにそれは見てい ないのだが、ちょっと気になって原作本 を読んだ。 京大名誉…

辻原登「約束よ」

ちょっとエンジンをかけて辻原登を読ん でいる。今回は短編集「約束よ」、7編。 「約束よ」少々官能の香りの話 「青黄の飛翔」奇想天外 「かみにさわった男」おかしみの逃避行 「窓ガラスの文字」かなの冒険、好きな話 「河間女」中国の奇譚 「かな女への牡…

谷川俊太郎「ひとり暮らし」再々読

先日文庫で買って読んだのだが、ブログ を検索したら、2005年に読んで、2011 年に忘れていてまた読んでいる、都合3 回目である。10年も前だし、単行本は処 分してきたからなあ、自分を許す。 タイトルがなんだか手に取って読んでみ たいと私には思わせる。…

辻原登「抱擁」

このままいくと古い作品が読めなくなっ てしまうと探しはじめてつぶしていく。 これは中編くらいの作品か、ゴシックロ マンというかゴシックホラーというかこ ういうものも書いていたのか。実際の歴 史を話に入れこんで虚実織り交ぜての物 語、いっきに読ま…

最相葉月「仕事の手帳」

ノンフィクションライター最相葉月のエ ッセイ集をはじめて読んだ。 「絶対音感」や「セラピスト」などの誠 実なライターという印象だが、ほんとう に大変な仕事だなと感心する。現代は、 ノンフィクションの不遇の時代で、読者 がいなくなり、出版社も不景…

谷川俊太郎「詩選集4」

集英社文庫版の谷川俊太郎詩選集の1, 2,3を持っていたが、先日、この4 が2016年に発刊されていたことを偶然 に知る。 それでアマゾンで購入、田原という中国 の詩人、翻訳家が編著したシリーズであ る。ゆっくり読もう。 谷川俊太郎詩選集 4 (集英社文…

中野京子「はじめてのルーブル」

ミロのヴィーナスもサモトラケのニケも 見ず、モナ・リザも遠目にあれかと見え ただけで、ルネサンスあたりのものを2 日間かけてじっくり観たつもりだったが、 もうあまり記憶がない。すこしだけ撮っ た写真を見るとこんな名作も観たのだと 驚くのだが。 で…

「昭和モダン建築巡礼完全版1965-75」

「1945-64」に続けて「昭和モダン建築 巡礼完全版1965-75」を読んだ。 驚くことに稲沢市庁舎が載っている、車 で前を通ったことはあるのだが名建築だ とは思わずに。大阪のリーガロイヤルホ テルはやはりね、あのラウンジは見事。 黒川紀章の中銀カプセルタ…

辻原登「村の名前」

辻原登の芥川賞受賞作、ようやく読んだ。 我が市に2つあった図書館の片方が閉鎖 になり、もう一方に引き取らない図書を 市民に無料配布するというので貰いに行 ってきた。 目当ては美術関係、豪華本だったが新し いものがあまりなくてふらふらしていた ら辻…