北山修「コブのない駱駝――きたやまおさむ「心」の軌跡」

北山修が自分のことを精神分析的に振り 返る評伝のようなもの。いくつも彼の本 を読んでいるので知っていることも多か ったが、眼の持病をもっていたこと、進 学への葛藤、父親との関係等知らないこ とも分析してみせている。そして加藤和 彦との関係、彼を…

バスケットのこと

NBAのプレーオフを見ていた。レイカー ズはレブロンと八村から応援していたが 残念ながら負けて今季終了した。レブロ ンはピークを過ぎての奮闘で熱かったし、 八村はそれなりに活躍したけどここ一番 の存在感はまだまだだった。それでも白 熱したいい試合だ…

独学ピアノ

2か月ほど経過した、ほぼ毎日20~30分 ほど練習する。バイエル(半分)と幼児 用の練習曲(メロディがある)でようや く少しだけ右手左手が別々に動く。考え てみればギターだって右手と左手は別々 の動きをするのだから不思議なわけがな い(と、自分を思い…

坂本龍一「音楽は自由にする」

こんな文庫の自伝が出ていることを知ら なかったので購入して読む。親のことや 高校バリケードのことや武満徹ビラのこ とは知っていた、でも音楽デビューして からはもっと戦略的にやっていたと思っ ていたらそうでもないようだ。社会への コミットももっと…

高野文子「ドミトリーともきんす」

新聞の書評欄でマンガの紹介があり、気 になると書店で探そうとするのだが、ど の棚にあるのか皆目わからない。かつて 書店へ行っても読みたい本が見つけられ ないという人に会ったことがあるが慣れ てないとそうだろうなと思ったことと同 じだろうなと思う…

鴻上尚史「愛媛県新居浜市上原一丁目三番地」

作者の自伝小説、3編。 1.生まれた家、父のこと、母のこと、 上京まで。 2.上京、劇研、第三舞台、岩谷の死。 3.現在、生まれた家の処分、離婚後 の新居。 3つの物語、鴻上のことはある程度知っ てはいたが、あらためて過度に熱く生き てきたことが…

村上春樹「街とその不確かな壁」

読了する。 元になった「街と、その不確かな壁」は、 1980年夏に雑誌広告で見て書店で「文學 界」を手に取ったことを覚えている。で もここで立ち読みするわけにはいかない、 単行本になったら買うのだと、すでに期 待の作家だった。そのうち作家本人が失 敗…

池澤夏樹「また会う日まで」

700ページを超える長編小説一気に読 了す。深い感慨あり。 ひとりの人生をその時代に重ね合わせて 書き記す、ここでは海軍軍人、天文学者、 キリスト教徒の3つの顔を持つ池澤の大 伯父について。 敬虔なキリスト教徒が戦争をする、軍人 なのだから敵を殺…

辻原登「翔べ麒麟」(上)(下)

阿倍仲麻呂を主人公の中国もの長編歴史 エンタメ小説。辻原には同じ中国ものの 「韃靼の馬」があるのだが、わたしはこ ちらの方が好み。阿倍仲麻呂は帰国でき なかった悲劇の遣唐使、「天の原 ふりさ けみれば 春日なる・・」という和歌でも 有名なのだがど…

吉田修一「森は知っている」

先日読んだ「太陽は動かない」の前段階 の話のようだ。どうして産業スパイのよ うなものになったかという話、家で虐待 を受けていた幼年期を持つ青年が成長し ていく話なのだが。 実は太陽は動かないと関係があると思っ ていなかったので、またも吉田修一ら…

三木卓「馭者の秋」再読

わたしのベスト何冊かの一冊で、ふとな ぜその思い入れはなんだったのか確認し たくなり、本棚を探したけど見つからな くて引越しの時に処分してしまったのか と再度入手し、再読したのだ。 そうそうこういう話だった、いや物語自 体はそれでいい、49才の…

村上春樹「村上さんのところ」

村上春樹の長編新刊予告が出て、しかも なんと「街とその不確かな壁」という。 かつて文学界に「街と、その不確かな壁」 という中編小説を掲載し、それを出版せ ず没にした幻の作品という経緯があるが、 ほぼ点がないだけの題名の長編新刊とい うので期待が…

吉田修一「橋を渡る」

吉田修一をもう一冊。吉田修一ははずれ がない作家だと思っていたが、先の「太 陽は動かない」に乗れず、じゃあと「橋 を渡る」。1章から3章まではそれぞれ 別の話だけど読ませる、なんとなく不穏 な空気なんだけど。 そして4章、一転してSF。1から3章…

吉田修一「太陽は動かない」

ひさしぶりに東京へ用事で出掛けたので、 新幹線のお供に読んだ本。 吉田修一がこんな話を書くんだと驚く。 産業スパイというか闇ビジネス社会の話 なんだけど、まあ飽きもせず一気に読ん でおいて、いやこんな都合のいい話はな いぞ、これは流行りのハリウ…

大江健三郎「同時代ゲーム」

奥付を見ると昭和55年とある、でもすぐ に挫折したことを覚えている。難解だとの 感想を聞いたのか若い人たちにも読みやす くと、その後、ほぼ同じ話の変奏として、 「M/Tと森のフシギの物語」が出てこち らは読むことができた。 フリーになった後、か…

筒井康隆・ 蓮實重彦 「笑犬楼 vs.偽伯爵」

図書館で「証し」のついでに借りてきた 本。筒井は昔読み漁った、蓮實は評論「 小説から遠く離れて」を読んだのみ。 それで何の気なしに読んでいたら、大江 健三郎絶賛、しかも「同時代ゲーム」を。 わたしはかつてこれを読みだして投げ出 している。しかし…

脱落、そして祈る

信仰とはなにかという疑問をずっと持っ ているのだが、最相葉月が日本のキリス ト教信者135人にインタビューをし、 日本のキリスト者がなにを考えてきたか を記すノンフィクション「証し」を出版 したのを見つけ、図書館に予約した。 さて受取りに行った…

沢木耕太郎「天路の旅人」

ようやく読んだ、沢木の初版サイン本。 ひさしぶり(9年振り)のノンフィクシ ョンだからか、先日も新聞のインタビュ ーとNHKの番組に本人が登場して本の 紹介があった。 大作である、第二次世界大戦の後半、国 の密偵として中国、蒙古、チベット、イ ンドへ…

吉本隆明「夏目漱石を読む」

「猫」が読み進められなくて中断。買っ てあった評論というか講演録を読む。 吉本隆明は興味を持った作家については とことん読む尽くす、読み解くそうで、 漱石を一級の作家として評価しているこ とから読んでみた。講演録をベースにし ているので読みやす…

椎名誠「失踪願望。」

2014年以来のシーナである。 新聞の書評に載っていたのを図書館で見 つけ読んでみた。シーナも喜寿である、 階段から落ちて骨折、白内障手術、車免 許返納、そしてコロナ感染。 昔、彼を発見した時、わたしは20代でシ ーナはその後会社を辞めベストセラー作 …

門井慶喜「銀河鉄道の父」

門井慶喜は軽妙で明るく話はうまいゆえに、 面白いに決まっていると避けてきた、しか も直木賞作品である。ところが読み始めた らいっきに読んでしまいました。 宮沢賢治はある種ダメ男じゃないか、知ら なかった、妹トシは幼くして亡くなったん じゃないの…

夏目漱石「虞美人草」

一度挫折した「虞美人草」を読んだ。 長くトライしてきた漱石読破プロジェク ト(新潮文庫版)をいいかげん結着をつ けよう、年内にきりをつけようと決めて、 あとは「虞美人草」と「猫」。 さて、虞美人草、東京帝大生の3人の男 と金持ちの跳んでるお嬢様、…

川本三郎「ひとり遊びぞ我はまされる」

つられて川本三郎のエッセイ集を久しぶ りに読んだ。ちょっと蘊蓄が詰め込みす ぎで読むのに理解力がついていかないが 面白く読んだ。 コロナ禍で身動きできないといいながら いろんなところへ仕事がらみで旅ができ て、コロナ禍で苦労している一般人とは 違…

夏目漱石「明暗」

最後の作品(未完)読了。 おもしろい、ほぼ事件は起きないのに、 どうでもいいような会話、心理描写なの にぐいぐい読ませる。主人公津田は自分 から行動しない、妻延子は積極的だ、ド ストエフスキーに登場するような小林が いる、そこに清子が現れる。各…

池内紀・川本三郎「すごいトシヨリ散歩」

ちょっと暇つぶしに読んだ、トシヨリの 散歩の話ではない。旅、鉄道、映画、歴 史等縦横無尽に話をする、しかも雑談。 ナチスの歴史に詳しい池内紀と荷風に詳 しい川本三郎を再認識した。 ところで、回覧雑誌という思い出話がで てきて、わたしも突如思い出…

夏目漱石「行人」

ようやく読み終えた。 第1章の友達という章がなかなか読み進 めない、全体像を知らないので話の先が 読めない。ところが第2章から一気に話 が動き出す。学者の兄と弟、その家族、 気難しい兄は知識人としての苦悩と不 安感を抱えている。いまでいうならな ん…

辻原登「遊動亭円木」

盲目の落語家にまつわる人情噺の連作集。 好きな作家といえども好みとそうでもな いものがあるのは当然であり、これは後 者。谷崎賞受賞作品なのにようやくアマ ゾンで購入できたのだが、北村薫の円紫 さんと私シリーズとはもちろん違うんだ けど自分の中で…

高村薫「冷血」(上)(下)再読

前に読んだ「冷血」は単行本で、再読は 文庫本。高村薫は文庫化するとき大幅改 稿するというが、なにぶん細部は覚えて いないなので気にはならなかった。 「我らが少女A」を再読したので、次は 「冷血」と思っていたので、ようやく、 時間がかかったしんどか…

高村薫「土の記」(下)

読みました。ちょっと冬ソナに気持ちが 行っているけど、なんのなんの高村薫の 圧倒的な世界観、この言葉はあまり使わ ないけど言ってしまおう、感動した。 シャープに勤めながら農家の婿養子に入 る、妻に先立たれ、定年後農業をはじめ る、コメ作り、茶畑…

高村薫「土の記」(上)

高村薫の上下巻の上を読了。 漱石の「行人」、辻原登、それにこれと 3冊を並行して読んでおり、これはいか んと思いながら、さらに冬ソナも見始め て。 高村薫のこれは全編農業の話なので敬遠 していたが、先日、我らが少女Aを再読 してよかったのでやっぱり…