津野海太郎「かれが最後に書いた本」

webの「考える人」で連載していた原稿 を中心としたエッセイ集。最後の本と云 っているがまだまだ大丈夫。 文章が芸になっている、面白い、80年の 人生の蓄積からの交友、経験が滲み出て いるといえる。うらやましい限り。 かれが最後に書いた本 作者:津野 …

辻原登「隠し女小春」

辻原登の新作である。 タイトルからおかしい、装丁の絵も純文 学とは思えない、奇想の物語である。 リアルドールを愛玩する男がリアルな女 性と付き合いだし、その嫉妬から人格を 持ちはじめ、最後は心中天網島よろしく (なんといっても小春だからね)心中…

永田和弘「あの胸が岬のように遠かった」

なんとなくわかる60年代の典型的な青春。 なんと赤裸々な青春記なんだろう。 NHKのドキュメンタリで永田和宏のこの 本の話を見たのだが、その後それのドラ マ化が放送され、さすがにそれは見てい ないのだが、ちょっと気になって原作本 を読んだ。 京大名誉…

辻原登「約束よ」

ちょっとエンジンをかけて辻原登を読ん でいる。今回は短編集「約束よ」、7編。 「約束よ」少々官能の香りの話 「青黄の飛翔」奇想天外 「かみにさわった男」おかしみの逃避行 「窓ガラスの文字」かなの冒険、好きな話 「河間女」中国の奇譚 「かな女への牡…

谷川俊太郎「ひとり暮らし」再々読

先日文庫で買って読んだのだが、ブログ を検索したら、2005年に読んで、2011 年に忘れていてまた読んでいる、都合3 回目である。10年も前だし、単行本は処 分してきたからなあ、自分を許す。 タイトルがなんだか手に取って読んでみ たいと私には思わせる。…

辻原登「抱擁」

このままいくと古い作品が読めなくなっ てしまうと探しはじめてつぶしていく。 これは中編くらいの作品か、ゴシックロ マンというかゴシックホラーというかこ ういうものも書いていたのか。実際の歴 史を話に入れこんで虚実織り交ぜての物 語、いっきに読ま…

最相葉月「仕事の手帳」

ノンフィクションライター最相葉月のエ ッセイ集をはじめて読んだ。 「絶対音感」や「セラピスト」などの誠 実なライターという印象だが、ほんとう に大変な仕事だなと感心する。現代は、 ノンフィクションの不遇の時代で、読者 がいなくなり、出版社も不景…

谷川俊太郎「詩選集4」

集英社文庫版の谷川俊太郎詩選集の1, 2,3を持っていたが、先日、この4 が2016年に発刊されていたことを偶然 に知る。 それでアマゾンで購入、田原という中国 の詩人、翻訳家が編著したシリーズであ る。ゆっくり読もう。 谷川俊太郎詩選集 4 (集英社文…

中野京子「はじめてのルーブル」

ミロのヴィーナスもサモトラケのニケも 見ず、モナ・リザも遠目にあれかと見え ただけで、ルネサンスあたりのものを2 日間かけてじっくり観たつもりだったが、 もうあまり記憶がない。すこしだけ撮っ た写真を見るとこんな名作も観たのだと 驚くのだが。 で…

「昭和モダン建築巡礼完全版1965-75」

「1945-64」に続けて「昭和モダン建築 巡礼完全版1965-75」を読んだ。 驚くことに稲沢市庁舎が載っている、車 で前を通ったことはあるのだが名建築だ とは思わずに。大阪のリーガロイヤルホ テルはやはりね、あのラウンジは見事。 黒川紀章の中銀カプセルタ…

辻原登「村の名前」

辻原登の芥川賞受賞作、ようやく読んだ。 我が市に2つあった図書館の片方が閉鎖 になり、もう一方に引き取らない図書を 市民に無料配布するというので貰いに行 ってきた。 目当ては美術関係、豪華本だったが新し いものがあまりなくてふらふらしていた ら辻…

沢木耕太郎「作家との遭遇」

沢木耕太郎は「路上の視野」と「象が空 を」をいう分厚い全エッセイ集という形 で出されてきたのに、その後出されてな いのでどうしたのかと思っていたら「銀 河を渡る」と「作家との遭遇」という分 厚くない2冊同時発行という形で上梓さ れた。そのうち「銀…

原田マハ・ヤマザキマリ「妄想美術館」

人気作家の原田マハとヤマザキマリの対 談集。二人の偏愛を語るところはおもし ろいのだが、まとまりに欠け、深みに入 っていかない。本人たちのせいじゃなく、 SB新書の編集者の安易な企画と思われる。 もったいないことだ。 ルネサンス初期のイタリア画家…

「昭和モダン建築巡礼完全版1945-64」

昭和モダン建築巡礼をしてイラスト付き で説明してくれる本。その戦後復興期か らオリンピックに向けての飛躍期までに 建てられた名作建築を訪ねる。なんとい ってもイラストがわかりやすい。ぜひ見 てみたい村野藤吾、坂倉準三、前川國男、 丹下健三いろい…

谷川俊太郎/尾崎真理子「詩人なんて呼ばれて」再読

語り手・詩 谷川俊太郎、聞き手・文 尾崎 真理子という形の、文藝記者の尾崎真理 子の谷川についての評伝の再読。 谷川がいわゆる詩壇で認められなかたこ と、詩は自我の表現ではないこと、村上 春樹にも通じるデタッチメントのこと、 すべてが興味深かった…

中村好文「意中の建築」(上)(下)

中村好文が世界中の意中の建築物を訪れ、 詳細に観察し分析し感想を記す。いかに も楽しそうな、でも細部に至るまでの好 奇心が溢れる喜び、行ったことも見たこ ともない建築物なんだけど読んでいてこ ちらも楽しくなってくる。 村野藤吾の現在の目黒区役所…

黒川創「京都」

黒川創をもう一冊読んだ。 京都を舞台にした短編集、4作。戦後の 記憶、地図から消されていく場所、市井 の人の営みを緻密に深く書き記していく。 一作目の「深草稲荷御前町」が一番気に 入った。観光都市の煌びやかな京都とは まるで違う澱に沈む歴史が書き…

和田誠・俵万智ほか「連句日和」

以前、永田和宏や辻原登の連句、歌仙の 本を読んだが、こんどは和田誠、俵万智、 矢吹申彦、笹公人の「連句日和」を読ん だ。こちらのほうが楽しそうだが、やっ ぱり蘊蓄が豊富ですごいなあと思う。 いちどやってみたいと思うが、そもそも 短歌をつくったこ…

黒川創「ウィーン近郊」

「鶴見俊輔伝」で読んだことがある黒川 創の小説をはじめて読んだ。 ウィーンで客死した男の人生を静かに端 正に描く。葬儀その他の始末をする妹の 心情と兄の追想から描きだすとともに、 オーストリア大使館の領事や教会の人た ち、さらに同居し支え合って…

宮本輝「草花たちの静かな誓い」

ひさしぶりに新幹線に乗って、読書に一冊 の本。こういうときはいつものように肩の 凝らない物語を。 宮本輝もひさしぶり。ちょっとかわった話 ではある。人生の謎解きのような出来事が ロスの高級住宅地を背景に綴られている。 邸宅には豪華な庭というか樹…

芸術新潮2022年3月号

ローマ教皇 怒濤の2000年美術史という特集 で早速買って読んだ。いやあむつかしい、 教皇の名前がわからない、カトリックは清 濁併せ呑んで懐が深いなあと改めて思う。 途中で映画の話が出てきてそれは面白かっ た。映画「ローマ法王の休日」びっくりす る。…

中島岳志「思いがけず利他」

利他について2冊目。中島岳志はちょっと 関心がある政治学者だが、これは読みやす い。立川談志の文七元結という落語を題材 に利他について説明するのだがこれが面白 い。youtubeで見てみよう。 利他についてはわかったようなわからない ような。でもキモは…

伊藤亜紗編「利他とは何か 」

集英社新書の「「利他」とは何か 」という 本を読んだ。「利他」という言葉に惹かれ てちょっと検索したら、まずはこれ、もう 一冊はいま読んでいる。 うまくここへは書き記せないが云ってるこ とはわかる、東工大の研究プロジェクトが 利他のマイナス面を含…

安野光雅「会えてよかった」

安野光雅が亡くなって、まだいくつも本が 出ている。買ったり、図書館で借りたり、 いろいろ読んだりしているが、いままであ まり書いていない。人柄がにじむ朗らかな 文章に気持ちが和む、この本も広い人脈、 交友関係が楽しそうで自分でもうれしくな る。…

永田和宏/知花くらら「あなたと短歌」

図書館で永田和宏で検索し見つけた本。 短歌初心者の知花くららが永田和宏の指導 を得ながら、短歌について学んでいく本。 とてもわかりやすく、なるほどとは思うが、 いざつくってみようと思うとそうはいかな い。興味はあるんだけどね。あなたと短歌作者:…

池井戸潤「空飛ぶタイヤ」

なんにもしたくない日は読書、最近は困っ たときの池井戸潤。分厚い文庫本「空飛ぶ タイヤ」。なんとなく「下町ロケット」に 似ている、直木賞を取る前の作品らしい。 えーい、いっきに読みました。大企業のマ ウンティングを書かせたらピカイチですね。 お…

池上俊一「ヨーロッパ史入門―市民革命から現代へ」

先日読んだ「ヨーロッパ史入門―原形から 近代への胎動」の続編である「ヨーロッパ 史入門―市民革命から現代へ」を読んだ。 こちらのほうが少しは知っている歴史では あるが、ウクライナ周辺もきわめて複雑で 苦難の歴史に翻弄されてきたことがわかる。 結局…

原尞「そして夜は甦る」

原尞が直木賞を取って「私が殺した少女」 を読んだのは確かだが、その後処女作の 「そして夜は甦る」を読んだかどうか記憶 がないので読んでみた。 うーん、まったく記憶がない、しかも話が 複雑で途中からよくわからなくなったが、 止めるのも癪なので読み…

原尞「それまでの明日」

知らなかったが13年も新作が出ていなか ったようだ。日本製の本格ハードボイルド の登場と話題になって直木賞もとって、そ れから20年以上もたって、さて読んだ、新 作。ぐいぐい読める、でも大きな事件は起 きない、もっと刺激的なミステリーがいっ ぱいあ…

平松洋子「父のビスコ」

昨年の暮れに平松洋子を2冊読んだところ、 先日新聞で読売文学賞に平松洋子の父のビ スコという記事を読んだので早速読んでみ た。故郷倉敷と父のことを綴る、最初に「 父のどんぐり」最後に「父のビスコ」とい うエッセイを置いている。 亡くなった父母をし…