向田邦子「思い出トランプ」

向田邦子全集の第三巻(小説)だけが家 にある。向田邦子は1980年直木賞、 81年に亡くなって、全集が87年くら いなので、読んでみようと思ったのは、 35才くらいの頃か。 読みはじめて、いやこれを読むのは早す ぎる、もっと中年になってから読も…

佐々木譲「沈黙法廷」

厚い文庫本を読みたくて久しぶりに佐々 木譲。法廷ものというか検挙から裁判ま での流れをじっくり書き込むとの小説で 劇的な場面もなくサスペンスもなくじっ くりと書き込まれた小説。 淡々と事件が解明されるというか、逮捕 から検察が起訴に持ち込むまで…

谷川俊太郎「谷川俊太郎絵本★百貨典」

図書館で見つけて借りてきた。現在、全 国を巡回している展覧会の公式図録でも ある本で、ちょうど隣町のはるひ美術館 で開催中で近々出かける予定なのだが、 その時にこの図録は買おうと思っていた。 でも、つい借りてきてしまった。 多くの絵本を作ってい…

「芸術新潮」坂本龍一特集

図書館で雑誌を借りるのは初めてかもし れない。2023年5月号、本屋でパラ パラ立ち読みをしたんだけど、つい借り てしまった。坂本は多面性があり、なん でもやれてしまう人のイメージだけど、 非力、無力の人だと今朝の新聞に書かれ ているのを読んで…

サリンジャー「バナナフィッシュにうってつけの日」再読

「ナインストーリーズ」のこの短編から グラースサーガがはじまるかと、古い文 庫を探し出してきて読んだ。野崎孝訳 1974年暮れの日付なので75年に入って読 んだのだろう、大学に入って乱読してい たころだ。話はよくわからない、わから ないほどシーモアは…

サリンジャー「フラニーとズーイ」再々読

ギフテッドという言葉を知った。彼らの 問題、社会との折り合い等いいことばか りでもないことがオープンになってきた。 フラニ―とズーイおよびその兄弟たちも そういうことだろう。末妹フラニ―が追 い詰められて、ちいさな宗教書に救い、 希望を求めるのだ…

梶村啓二「「東京物語」と小津安二郎」

平凡社新書で小津関連本を見つけたので 購入して読んだ。 「東京物語」を読み解く、なぜ世界はベ スト1に選んだか。日本人が日本的情緒、 あるいは郷愁をもって東京物語を観るよ うには世界の人々は観ているわけじゃな いので、ではなにに魅かれるのか、そ…

R・D・ウィングフィールド「フロスト始末」(上下)

フロストシリーズの最終巻、もう15年 も前の作品なのか。たしか「冬のフロス ト」も未読だと思うがとりあえずこれで ひと区切り。 あいかわらずワーカホリック、下品でだ らしなくむちゃくちゃなのだが、これが 慣れてしまってどんどん読めてしまう。 ギャ…

三浦しをん「墨のゆらめき」

書道のお仕事小説かと期待して読んだ。 こういうお話は手馴れたものなんだろう、 どんどん読めてしまう。しかし書道の深 みは書かれていない、書とはなにかも書 かれていない、書家の遠田がそのレベル まで来た才能、技術が書かれていない、 これはお仕事小…

吉田修一「ミス・サンシャイン」

新作に関心を持つのはもう限られた作家 だけにしようと決めたつもりなんだけど。 高村薫、池澤夏樹、辻原登、村上春樹、 吉田修一、松家仁之、平野啓一郎、三浦 しをん、沢木耕太郎、そんなところか。 その吉田修一、往年の映画大女優(アカ デミー賞候補、…

中野翠「あのころ、早稲田で」

中野翠は先日「小津ごのみ」を読んだの で、関係する本はないかと図書館へ行っ たら、この本を見つけた。 1960年代の東京と早稲田の思い出話。 中野翠は飾らずストレートなもの言いの イメージがあるが、これはちょっと雑な エッセイ、一度書いて組み立…

さそうあきら「神童」1~3巻

お盆疲れか猛暑疲れかしばらくぐったり している。マンガでも読むか。 さそうあきらはオーケストラの話「マエ ストロ」が面白かったので、こんどはピ アニストの話。この作家は絵がうまいの かへたなのかわからない、でも個性的な のは個性なんだろう。 こま…

沢木耕太郎「旅する力」再読

「深夜特急」を再読して、書棚の沢木本 塊りのあたりをすこし整理したら、この 本が出てきた、そうだこういう本もあっ たなあと、つい読みふける。 そうだったなあ、わたしにはそういう旅 する力がなかったんだなあとため息をつ く。 旅する力―深夜特急ノー…

川本三郎「映画の戦後」続き

この本で惹きこまれたのはアメリカ映画 の赤狩りについてである。 映画には政治や時代が深く入り込んでい ることがよくわかる。赤狩りには2回山 場があり、マッカーシーは2回目の主役 である。俳優や監督脚本家製作者等が吊 るし上げられ、犯罪人とさせら…

川本三郎「映画の戦後」

近くの図書館で、小津そのものの本はな いけど、小津のことが書いていある本な らあるかと探す、まずはこれ。 前半に日本映画、後半にアメリカ映画を とりあげたコラムが載っており、小津や 原節子や高峰秀子について取り上げてい る。実は後半のアメリカの…

吉田修一「永遠と横道世之介」(上下)

横道世之介が帰ってきた。 これは大河ドラマの三作目になるのか、 1作目も2作目も気持ちのよい青年の話 だったので期待感たっぷり。一気に読ん だ。気持ちよくて楽しくてうるうるっと きて、でも1作目から世之介の結末がわ かっていて、だからすべてがせ…

中野翠「小津ごのみ」

大型書店の映画コーナーの棚には小津関 連本が10冊くらい並んでいた。うーん、 研究本や批評集や名言集もいいんだけど ファンブックはないのか。がっかりして 家に帰りアマゾンで標記の文庫を注文し 読んだ。まずはファンブックからだ。 ところが見ていない…

佐々木譲「エトロフ発緊急電」

第二次大戦三部作の二作目、といっても 三作とも読んだような気がするのだが、 これは最後まで読んでもまったく記憶な し、初読という結論。一作目の「ベルリ ン飛行指令」は読んでいます、いくらか 覚えているぞ。 日米戦争直前の真珠湾攻撃をめぐるスパ イ…

三浦しをん「ののはな通信」

名作との評価高い作品を読む。 書簡小説、宮本輝の「錦繍」パターンか。 横浜の名門ミッション女子高で恋愛関係 になるふたり、青く若い女の子の手紙の やりとりがわたしにはしんどい、これが 傑作なのかと。吉田秋生の「櫻の園」は 好きなのだが、思いつめ…

四方田犬彦「いまだ人生を語らず」

図書館の新着のところでふと目に留まっ たのは、四方田犬彦ではなく拓郎かと思 ったからだ。今はまだ人生を語らずとい う好きな曲があり、同名だと一瞬思った のだが違っていた。つい借りてきた。 四方田犬彦は別に読者ではないが、かつ て「ハイスクール1…

辻原登「籠の鸚鵡」再読

先日「冬の旅」を再読して、同じ悪の物 語として、「籠の鸚鵡」を読み直そうと 思っていたところ、朝日新聞の書評欄で この本が出てきたのですぐに読む気にな って、一気に再読。 これも堕ちていく話、冬の旅は運が悪い という一面があったが、こちらは欲に…

坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」

「音楽は自由にする」に続く自伝のよう なもの。「新潮」に連載しているときか ら気になっていた、ぱらぱら立ち読みし ていたが、本となって購入し読了。 グローバルにつながりいろんな分野に関 心を持った人だった、あらためてその存 在は大きかった。つく…

週刊朝日

就職して2,3年電車通勤していた頃帰 りにホームで暇なときときどき週刊朝日 を買っていた。まだ就職したばかりの1978 年5月12日号、表紙は有名になったあの 涙目の山口百恵、買いました。1980年1月 25日号は宮崎美子、これも買いました。 あれから40数年…

三浦しをん「エレジーは流れない」

だらだらの一日だった、なにもしたくな いのでぐったり本を読んでいた、それが これ。だらだらにぴったりの物語。 ぐうたら高校生ものの小説は好きである。 なにかになりたいとの目的もなくだから 目標もなかった自分のあの頃と重ね合わ せて、不良にもなれ…

「チャリング・クロス街84番地」

ちょっと書棚の探し物をしていて見つけ だした文庫。奥付から1983年に買って読 んだらしい、気に入っていて処分されず 残していた。つい再読。 そうだった、気持ちのいい、心躍る往復 書簡集。ニューヨークに住むライターの 女性がロンドンの古書店に古書を…

半藤一利「幕末史」再読

以前読んだのだが再読。幕末の革命(維 新ではない)を経て明治とその後の歴史 を講談調に語りつくす。 薩長史観だと知ってはいたが、いまだに それを引きずる日本、靖国神社に西郷さ んがいないことも知っていたが会津長岡 等幕府側の戦死者が祭られていな…

独学ピアノ3か月

楽しい、バイエルをつかえながら弾いて 満足している。前にバイエルの抜粋本を 買って練習していると書いたが、抜粋で なく全部弾いてみたいと思いもう一冊買 ってきた、ただし下巻だけ。バイエルは 古いと書かれてもいるが気にしない、可 愛い曲が多い(幼…

辻原登「冬の旅」再読

辻原登全作読破を目指して、でも前に読ん だこの「冬の旅」の衝撃が忘れられず、文 庫を買って再読。いささか忘れていたとこ ろもあったが、こんどは衝撃感というより も圧倒的な重量感、緒方は運がなく要領も ないことで転落していく、ひとりの人生を 語る…

池井戸潤「不祥事」「花咲舞が黙ってない」

池井戸潤はどれもどんどん読める、これ でいいのかと思ってしまうほど読めてし まう、ちょうど新幹線に乗っていたので 許してほしい。 銀行の不祥事を行員の花咲舞が正してい くのだが、組織の中なのですべて解決で きるわけではない、組織を守るためとい う…

北山修「コブのない駱駝――きたやまおさむ「心」の軌跡」

北山修が自分のことを精神分析的に振り 返る評伝のようなもの。いくつも彼の本 を読んでいるので知っていることも多か ったが、眼の持病をもっていたこと、進 学への葛藤、父親との関係等知らないこ とも分析してみせている。そして加藤和 彦との関係、彼を…