酒井順子「紫式部の欲望」

フィクションのNHK「光る君へ」を見る ことで、紫式部本人が千年前にほんとう に存在し生きていたのだと実感する、考 えてもいなかった、光源氏がフィクショ ンであるように、紫式部もフィクション だと。 関連本を読もうと図書館へ行ったら、い っぱいあっ…

辻原登「熊野でプルーストを読む」

辻原登の本を中心としたエッセイ集、お よび昔のこと、父のこと等を思い出すエ ッセイも含む。 プルーストのことを書いているわけでは ない、でもむつかしい、博覧強記である、 なんとなく彼の小説のバックボーンを垣 間見ることとなった。 熊野でプルースト…

別冊太陽「谷崎潤一郎」

谷崎潤一郎も一応一区切りつけて、この ムックを読む。 江戸、戦争、阪神間、女性、人となりを 俯瞰する。わがままに自分に正直に生き た人だった、戦時にも彼なりの抵抗もし た、現代なら炎上しただろう。 大谷崎らしい大人物だったと理解した。 別冊太陽23…

きたやまおさむ「むなしさの味わい方」

岩波新書の新刊、北山修の一般人向けの 本。なんとなく北山修、きたやまおさむ というと手に取っていたが、これはちょ っと距離があった。「むなしさ」という 感情がわたしにはピンとこない、わりと 冷淡に思い悩まないようにしているから だろう。 わたしに…

北村薫「中野のお父さんと五つの謎」

中野のお父さん第4弾。 なんとなく手に取って4冊目、いつも蘊 蓄がマニアックでむつかしい。今回は、 漱石と清張がわりとわかりやすく面白か った。月がきれいですね、か。 中野のお父さんと五つの謎 作者:北村 薫 文藝春秋 Amazon ktoshi.hatenablog.com

新書「書物の達人 丸谷才一」

集英社新書「書物の達人 丸谷才一」をブ ックオフで見つけて、こんな本が出てい たのかと読んだ。 丸谷才一に係る講演録で、川本三郎、鹿 島茂。湯川豊らによるものである。 丸谷才一はモダニズム文学といわれてい るが、モダニズムというのがいまひとつ わ…

辻原登「だれのものでもない悲しみ」

勢いで続けて辻原登、長編「だれのもの でもない悲しみ」である。 昔、映画好きには憧れだった池袋の文芸 座がひとつの舞台になる。そこでフェリ ーニの「カリビアの夜」を男と女が見る ところから赤い糸が絡み合ってくる。と いって単純な恋愛小説ではもち…

辻原登「父、断章」

ひさしぶりにまだ読んでなかった短編集。 「父、断章」「母、断章」 フィクションかノンフィクションか、私 小説の体で虚構を語る、読ませる。 母、断章のラスト、人魚のように泳ぐ母 のイメージは強烈である。 「午後四時までのアンナ」 これも虚構か、これ…

高村薫「リヴィエラを撃て」(上下)

まだ読んでない高村薫がある、その一冊。 いやあ時間がかかってしまった、大江の 評論と並走してたのでさらに時間がかか った。その上登場人物の多さ、所属先の 複雑さ、ストーリーは重層的、うーん、 すべて理解したとはいいがたい。 ただ重量級大長編に圧…

福岡伸一「フェルメール 隠された次元」

フェルメール巡礼をする福岡先生の科学 者らしいフェルメール探究本。 制作順に並べるといろんなことがわかっ てくるという話はおもしろかった。また 指紋の痕跡を探すことでわかることがあ るというのも期待できる。 学者というのはとことんのめり込むもの …

尾崎真理子「大江健三郎の「義」」

大江健三郎の「壊す人」や「ギー兄さん」 をイメージがわかないままに読んできた のだが、それがわかるかなと読んでみた のがこの本である。尾崎真理子は「大江 健三郎作家自身を語る」のインタビュー 本を出して大江の研究者でもある。とこ ろがブレイクと…

ハルノ宵子「隆明だもの」

ちょっとむつかしい本に手を出していて なかなか読み終えない。それで図書館で 軽いエッセイをいろいろ借りてきて読ん でいる。まあ、ここで感想を書くまでも ない。そのなかの一冊、吉本隆明の長女 の父と家族にまつわるエッセイ集。 よしもとばななは読ん…

図鑑はじめての絵画

小学館の「図鑑NEOアートはじめての絵 画」を見た、読んだ。図書館のこどもエ リアで見つけて、そうそう発行された時 話題になって見たいと思っていたのを思 い出して借りてきた。 30年以上前に美術に興味を持ち、それま でマネとモネの違いもわからなかった…

わたしのコロナも終わり

昨日はコロナワクチン6回目を打ってきた。 7回の内6回打ったことになる、いくらか 流行傾向にあるのを見て、無料もまもな く終了なら打っておくかとセコイ! 図書館で綿矢りさ「あのころなにしてた?」 を借りて読んだ。2020年に不気味な 流行が始まり…

清水義範「目からウロコの世界史物語」

ひさしぶりの清水義範、ねっころがって 読む。中学高校で習った世界史はほぼヨ ーロッパ中心(たぶん、寝てたので)、 だからモンゴルや中東、トルコの歴史と いうのはなんともあいまいである。昔、 世界最強の国家、文化があったことなど まるでわかってい…

津村記久子「水車小屋のネネ」

もう新しい現代作家は開拓しない、読ま ないと決めていたのだが、あまりに褒め られている本を知ったので図書館で借り て読んだ。谷崎潤一郎賞。 大長編、1981年から10年毎に仲の いい姉妹が成長していく物語。目次から して2011年という章がある…

別人になる

あまり調子がよくないときにこういうも のを知るとたじろぐ。 「士別れて3日、すなわちさらに刮目し て相待すべし」 アイデンティティの確立とか自分探しな んかじゃない、別人になるということ。 そうか、だから「自分らしく」ではなく 「自分らしくなく」…

谷崎潤一郎「蓼喰う虫」

おもしろかった。文章がなめらかで華や かでもある、流暢な日本語というのか、 離婚を前にした現代的な話を関西の雰囲 気に馴染ませ、気持ちよく読ませる。 人形浄瑠璃(文楽)が大きく絡んでくる、 すこし見たことがあるのでわかるところ もある、それでよ…

谷崎潤一郎「春琴抄」

谷崎6冊目。 ちょっと印象と違っていた、もっと楚々 とした春琴をイメージしていたし、献身 というか純愛のイメージだったのだが。 これは確かに傑作、春琴のリアルな描写、 人物造形がすばらしい、わがままで厳し くてそれでも魅力的な春琴像は見事。 文章…

沢木耕太郎「夢ノ町本通り」

本にまつわるエッセイ集。 やはりモハメッド・アリの長い書評とい うかエッセイが楽しめた。 山本周五郎についての解説、エッセイが 多くあるがすべて未読なので省略。時代 物は近寄らないようにしていたが、藤沢 周平にしびれ、池波になじめず、さてこ れか…

谷崎潤一郎「猫と庄造とふたりのおんな」

谷崎の5冊目。 そういえばと思いついて青空文庫を見に 行ったらありました。短編はこれでいい かな。 「猫と庄造とふたりのおんな」タイトル がいい、読みたくなる。(本当は「をん な」らしい) ダメ男の系譜の小説、wikiを見たら映画 化されていてやっぱり…

谷崎潤一郎「刺青・秘密」

谷崎の初期短編集の2編を読んだ。 性的倒錯というよりも耽美というのか、 そういう作品である、どう読み取るのか はわからない、でもともに1910,11年の 発表、明治の終り、大正デモクラシーの 到来か、とくに「秘密」の現代性は、よ くぞその時代に書かれた…

谷崎潤一郎「卍」

次は「卍」 樋口可南子と高瀬春奈の映画「卍」1983 年を見ている、単に二人のベッドシーン を見に行ったようなものだが、wikiを見 ると小説とは設定がまったく違う。 谷崎が単に同性愛そのものを書いたとは 思えない、人間の恋愛の複雑さ、女女、 男女、夫婦…

廣野由美子「シンデレラはどこへ行ったのか」

僕らがルパンやホームズを読んでいた頃、 女の子たちは「若草物語」や「赤毛のア ン」や「あしながおじさん」を読んでい たことは知っていた。それらをコロナの 頃に読む機会があって、少女ロマンスと 思っていたものが実は自分で切り拓いて く物語だったこ…

谷崎潤一郎「痴人の愛」

漱石プロジェクトに大層時間がかかって しまい、ようやく次は谷崎プロジェクト である。谷崎は細雪しか読んだことがな く主要なものを読んでみようと思う。 最初は「痴人の愛」、増村保造監督、小 沢昭一、大楠道代の1967年の映画を見て おり(小沢昭一の怪…

池澤夏樹「真夏のプリニウス」再読

読み直す池澤夏樹シリーズはもうどこま できたのか把握できず。初期の作品の文 庫、これはまだだなと思い読む。すこし だけ思い出す。 やっぱり理屈っぽい、昔はこれくらいな らもくらいついただろうがいまはそこは 求めない。 主役の女性研究者がかっこいい…

池澤夏樹「光の指で触れよ」再々読

先日「すばらしい新世界」を再々読した ので、続編の本作も再々読するしかない ので読んだ。 感想は2回目とほぼ同じだ。よりよかっ たように思える。ただし女性が自立する のにここまでいかないといけないのはお かしなことだ、もっとハードル低くある べき…

北村薫「中野のお父さんの快刀乱麻」

中野のお父さんの3作目。 北村薫はどんどんむつかしくなっている。 博覧強記もいいけどついていけない。円 紫さんシリーズもそうだし、これも日常 の謎をお父さんが解くというより論文レ ベルの蘊蓄披露である。 無学なわたしは楽しめませんでした、す みま…

植本一子「フェルメール」

写真家の植本一子(知らなかった)が出 版社の企画で、フェルメール全作品の写 真を撮りに行くという本というか写真集。 全作品を見に行くというのはもう何冊か 買って持っている、30数点の作品なので その気になればできそうに思える。 ここでの写真はフェ…

池澤夏樹「すばらしい新世界」再々読

沢木の「深夜特急」「天路の旅人」でチ ベットとかカトマンズのことが書かれて いて、もう一冊思い出したのはこの「す ばらしい新世界」である。それで再々読。 感想は再読のとおり、アユミさんの主張 が強い、わかっているけどこれは池澤の 主張、前面に出…